第17話「強敵」と書いて「トモダチ」と呼びたくなるほどぼっち体質でもないと思っている

 だんじょん暮らし2泊3日目。

 スープ煮てたら『月光』メンバーにたかられた。


『月光』パーティー6人と自分の分、昨晩と今朝で14食か。

 オープンサンド30食買ってダンジョンに入ったのにもう半分まで減ってしまっている。


 今まで先輩として便宜を図ってくれたりいろいろ恩があるとはいえ、大盤振る舞いしすぎましたか。


 まあ今回買ったものだけじゃないから、買い置き屋台メシだけでもぶっちゃけ何ヶ月とか半年とか隠遁生活できるんですけどね。


 しかも、『肉』ドロップと『魔石』があれば肉食生活できるし。


 ごく稀に虫系から『きのこ』がドロップするんだけど、〈鑑定〉様を信じてもあんまり食べたくない。

 薬の原料になってもらおう。


 食べたくないと言えば『虫肉』も。

 これが《鑑定》さんの【食用(美味)】表示を信じて食べてみると結構おいしいから困る。

 カニカマっぽかったりホルモン・マルチョウっぽかったり、前に出た人食い大ウナギっぽかったり。(注! 人も齧りそう丸呑みしそうっていうだけで、人が主食のウナギというわけでもないんだよ!


 昆虫ってカニやエビの系統なんだよ。

 ある程度、羽や甲殻が気にならないレベルの大きさがあれば、そういう味と食感。

 ダンジョン肉は「食べられる」ように血や毒を抜いてブロック加工してくれているし。



『虫きのこ』も『虫肉』も『謎肉』も、鍋物・スープに入れておけばそれなりに好評なんだよ。正体を明かさなければ。


 スープ万能説!






 いちおうボス戦お誘いしてみたけど、『月光』パーティーは29層に戻って行った。

『月光』パーティーは6人のフルメンバーだから自分と一緒にボス部屋入ったらランク上がりそうなものだけど、多分ここのボスのほうがスタンダード。

 あんまり変わらないんだ。



 さて、30層ボス戦頑張りますかね。



 ボスはイケメンオーガさんじゃなく、なぜか『ミノタウロス』。

 ミノさん強いよ。ぼっちだけど。



 基本1体だけど侮れない戦闘巧者。いろいろスキルとか織り込んでくるんだ。

 複数パーティーで乗り込んで、レベルや耐久力なんかが上がるのかどうかはわからない。

 楽になると言う話を聞かないから、多分えげつないぐらい強くなるんだと思う。



 B級パーティー6人と互角以上にやりあえるんだから、単体でAランクぐらいの能力ある。


 A級目前の【天戦士】オジール一人では勝てそうにないなあ。


【天戦士】は【天使】直属の現世実動部隊。とはいえただの〈職能ジョブ〉のひとつで、今現在特に誰かに仕えているというわけでもない。

 神に仕える系統で、それ故に《聖属性》のスキルに長けている。


 1対1の状況だと大技が刺さるところイメージできないんだよなあ。

 剣筋が素直すぎるというか、〈スキル〉に頼りすぎるところあるから。



 現役A級の【姫騎士】シャリアさんなら勝負になりそう。

 ミノさんも冒険者ギルドのAランク認定も、なんだかんだいい指標になるなあ。




 まずは軽く挨拶代わり、ミノタウロスの喉元狙って鉄木棍てつぼくこんを突き込む。


 冷静に払われる。


 払われた勢いそのままにくるりと1周回転して、思いっきり横薙ぎにする。

 これも『ミノタウロスの斧』の柄で受けられる。


 1トンぐらいの衝撃与えてるはずなのにほとんど浮かないのは[防御力]とか[HP]というパラメーターが仕事してるのかな。

 さすがによろけるとか、体半分ぐらいは動くけど。



 自分に〈加速ヘイスト〉、ミノタウロスに〈減速ディレイ〉をかけながら細かくポイントを稼いでいく。


 一撃でも貰ったら、からね。



 こちらがかわして反撃スタイルだと見破るとゴルフスイングで足元狙ってきたりと油断できない。

 大きく避けて地に足がついてない、避けられない状況を意図的に作りに来る。


 1トンフルスイングを当て、当たった瞬間に棍を収納、短剣に持ち替えて硬直の隙をついて細かく切り傷を重ねていく。


 ミノさんも似たようなことしてくるのよね。

 斧がすっぽ抜けた感じで投げてきて、油断してる後衛がこれで持っていかれたりする。


 専用斧、手元に戻すスキルをミノさんが持っているのか武器の固有能力なのか。

 ブーメラン的に手元に戻して背後からの攻撃を狙ったり収納から取り出す感じで湧くように手元に戻したり、使い分けてくるのも厄介。

 斧は1本しか無いし一応それなりの速度しか出ないので、よく見ていればなんとかなる。のかな?


 そして素手での格闘能力もかなり高い。得物が刃物じゃない自分のスタイルとしては時に棒をつかみにくる素手相手のほうが嫌だ。




 鍔迫り合いっぽく両者の足が止まると、「ぺっ」ってしてくる。

 

 通称「牛のよだれ」、なんでも溶かす溶解液がまた高性能。

 3m近い高身長を生かしてこちらの顔を狙って唾吐いてくるけど、しばらく戦ってると武器や盾を狙って溶かしにきたり、床に吐いて地雷みたいに踏ませにきたり。


 射程がほとんど無いのが救いとはいえ、灼熱の唾を自分の斧刃に吐きつけて白に見えるほど赤熱した斧を振り回しはじめたりもする。


[HP体力]が減るたびに行動が多彩になっていくという感じではなく、戦闘中に学習していくという風に見える。毎回。





[HP]が減ってきてから行う行動としては『恐慌咆哮テラーハウンド』。

 これは対策してないと全滅する初見殺し。


 咆哮、叫び声だからといって耳栓で止まるものではない。

 精神に直接攻撃してきて、確実に心を折りにくる。

「戦意喪失」「恐慌」「パニック」などの状態異常を引き起こしてくる上に、バフデバフの解除までしてくる。


 対応としては、事前に「状態異常」耐性を上げておくか、『恐慌咆哮テラーハウンド』が来てから状態異常を解除するか。


 回復系がいれば本人ひとりでも耐えられれば持ち直すことができる。

 皆がやっているのは、そろそろ来るというタイミングを見計らって〈状態異常回復薬リカバリーポーション〉を口に含んでおくというやつ。


「いつでも飲めるように」と手元に用意してる程度では間に合わない。

 手が震えてポーション瓶開けられなかったり落としたりという、なんともいえない事故も。




 目の前で爆発が起きたような、まるで質量を持つような大音量の渦に巻き込まれる。

 眩暈めまいがして気が遠くなるような感覚、まっすぐ立っていられない。


 口に含んだポーションを飲み込む、これがギリギリ何かできる限界。

 口中から喉、胃の形がわかるぐらいに、そこだけ「俺自身」。


 即時、ポーションが全身にまわり「俺が俺である」感覚が戻ってくる。




 これは最後の悪あがきのようなもので、ここを凌げばあとわずかだ。


 最後、鳩尾に棍の一撃が刺さる。


「モ゙オ゙オ゙オ゙ォォォ・・・」


恐慌咆哮テラーハウンド』もかくやという断末魔をあげてミノタウロスさんが崩れていく。

 黒いもやになって消えていく。



 たのしい! 最高だよミノさん!




――――――――――――――――

というわけで別作品主人公、チート牛頭鬼さん大活躍の巻


設定は思いつくけど、それで主人公に何をさせたいとか1章分の起承転結が思いつかない系でいつもの塩漬け。

それ言えば本作も先のことなーんも考えてないんだけどね。


10話ぐらい書いてるけど、ちょっとだけ公開してそのままエターナル予定

リンク先は「最新話の(※ここ重要)」下のほう、作者の他の作品とか関連小説から


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