第12話『森の魔女』さんのやんちゃ伝説!? 聞きたいっ!!

 朝、ゆっくり休んで遅めの起床。


 今日からしばらくダンジョン暮らしだ。




 屋台でメシ食って、まずはゴヨウ婆さんの店に顔を出す。

 ポーションが欲しいからではなく、必要な薬草やアイテム・完成品ポーションなどの納品と、ダンジョンに行くから欲しい素材があれば拾ってくると御用聞き。


 ゴヨウ婆さんも『森の魔女』仕込みの薬師くすし、つまり姉弟子だ。

 客がいないときはそのへんの話題でも盛り上がる。



『森の魔女』さんは過去にいろいろ(生産チート)やらかして伝説の存在へ。

 王様に囲われそうになったり王侯貴族に追いまわされたりといろいろ騒がしくなったので、森の奥に隠居している。


 そんなわけで、すでに歴史上の人物。

 今の爺さん婆さんに現役時代を知ってる人がギリギリ残っているかどうか、ぐらい。



 代金に関しては勘定せずに納める仲だ。

 ぶっちゃけゴヨウ婆さんに卸してる品に関しては友達価格の無償奉仕でもいいぐらいに思ってる。

 ゴヨウ婆さんのほうからも、看板になってくれている手間賃すらも取らず販売金額100%そのまま包んでくれているようにも見える。







 冒険者ギルドに顔を出す。

 専属というわけでもないけどベルラさんがいたので声をかける。


 今からダンジョンに篭ることを報告しておく。

 最短で10日、長くて15日ぐらいの予定。



「40層ですか?」


 バレテーラ・・・



「まさか。一人でそこまで行けませんよ。

 20層台でちょっと頼まれもの探し物がありまして。


 30ボスとはやりあわず、21層から帰る予定ですね」



「いえ、その発言すら異常なんですけどね。

 ソロならA級の戦闘職でもそんなことできる人いませんよ」




「そこはポーターだから、食料とか荷物関係で苦労することあんまり無いんですよね」


 巧妙に話題を逸らす。






 依頼掲示板から依頼票を剥ぎ取る。

 薬草を摘むように、新しそうなものはある程度残して塩漬けっぽいものから優先して表層から9層まで満遍なく。


 これでも結構な量になった。10層ボス関連のドロップ品は、『ボス戦1回しかやってない』というていなので供出は遠慮しておく。


 依頼納品を進めていると、納品解体班のシゲンさんから『一角ウサギ』の肉を求められた。

 迷宮産なら1ドロップ500gぐらいで買い取り査定大銅貨1枚100円だからなあ。

 食べるつもりじゃなければわざわざ拾わずに捨てていく人も多い。

 ポーターが頑張らなきゃ、ここ迷宮都市どころか国全体で肉が食えなくなるんだぜ。


 ポーターの地位向上を願い、周りに聞こえるように愚痴りつつ納品してあげる。

 とりあえず20塊ぐらい。





獄落ごくらく』ダンジョン入り口、ダンジョンに入る手続きをする。


 冒険者ギルドで伝えたのと同じ内容、20層台で10~15日予定。



 10層まで3時間ほど。

 直線距離で30kmぐらいあるはずだけど走ったり急いだりしてるわけでもないのに不思議なほどいいペースだ。


 一昨日は軽く探索しながら5時間弱。今日はほぼ一直線。



 10層ボスはゴブリンリーダーと取り巻きにファイターやアーチャーやメイジなど。


 最小はリーダー含めて6体。多ければ12体を超えることもあるらしい。

 ソロだとたいてい6体構成、シャーマン(回復系)が混じることがほとんど無いので安心だ。


 ゴブリンガード(盾持ち)をゴルフスイングでリーダーのところに吹き飛ばす。


 アーチャー(弓)の動きに気を使いながら、ファイター(剣)1、2の相手をする。


 とはいえこのへんのモンスター相手なら鎧袖一触。

 突いても薙いでも一撃で首が飛ぶ。


 お寺の鐘突きの軽く10倍以上の威力だからなあ。

 そりゃ頭蓋骨も弾けちゃって☆夏。



 当たれば痛いメイジの魔法より小回りが効く、連射というほどでもないけど撃ってくるアーチャーの弓のほうが怖い。

 アーチャーの首を狙いに行く。


「首置いてけ~!!」


 今、大流行中だからね。




 遠距離組はリーダーの両サイドに構えているから、アチャ殺ったこの位置だとメイジの前にリーダーと組んずほぐれつしてるガードが。


 避けて先にメイジに行くかほんの少し考えるけど、背中見せてるガードに一撃叩き込んでそのままメイジを飛ばす。


 振り向くと、やっとリーダーが立ち上がり武器を構える。

 ここまで2秒、コイン1枚飛ばして床に落ちるまでぐらいの時間。


 リーダーと殴り合って友情を深めるわけでもなく、一方的な虐殺だ。




 ドロップアイテムは「ゴブリンソード」、名前とは裏腹、性能はけっこう素直に高い。

 ダンジョン様が提供するアイテムだ。ゴブリンが持ってて相応の攻撃力とはいえ、金属そのものの質がすごく高いんだ。


「めざせ脱初級者」クラスの人たちに普及してほしいから積極的に拾ってギルドに売るようにしている。




 ここ10層を超えられるパーティー、体感では7割超えてそうなんだけど実際は3割切ってる様子。


 上を目指せば取れる「初段免状」、向上心があれば届くがそこまで本気なガチ勢でもない日銭を稼げればいいエンジョイ勢(?)が思ってるより多いと。




 11層からは少し様子が変わる。

 通路の幅も高さも倍ぐらいに広がり、その分大型モンスターが歩き回っている、と。


 クラス持ちの上位ゴブリンがチームで動くようになり、豚の顔のオークなんかも出てくるように。


 8・9層まで行けばゴブリンが職持ちで出てくるように、18・19層あたりではオークの職持ち、上位タイプが現れるようになる。



 このへんの単独上位オークよりはゴブリン将軍ジェネラル率いるゴブリン軍団のほうが手におえない。


 どこに潜んでいるのやら、20匹や50匹規模で挟み撃ちやパーティー分断を狙ってきたりするので結構殺意は高い。


 狼系の連携もなかなか素晴らしいものがあるけど、狼に乗ってるゴブリンがいたりして、おまえら仲いいな!?




 ダンジョンの掃除屋はネズミから虫系に。

 中でも死甲虫ヘルビートルと呼ばれるコガネムシがやばい。


 このあたりでは小型犬サイズでも、《魔力攻撃分散》と《打撃・斬撃耐性》が強く、のしかかられると齧ってくるのでちょっとしたミスで上位ポーションが必要な被害が出ることになる。


 そして虫系の特徴? 殺意が薄くて〈気配察知〉に引っかかりにくい。気がつけば甲虫や蜘蛛やゲジゲジやムカデ類が山ほどいる中に誘導されてたり。


 もちろん蜂とか殺意満載で襲ってくるタイプもいるけど、基本そこにあれば手を出す、積極的には狩りにいかないみたいなのが多い。

 



 ま、僕の〈探査〉魔法なら〈隠密〉スキルで隠れてない限りマップ表示から逃げられないんだけどね。





――――――――――――――――

P.S.

 世界で一番人間を殺している生物は『蚊』だと言われているけど、あいつら殺意無いよね。

 寄生して病原菌運ぶ媒介になってるだけで『殺し屋』名乗るのは、なんか違うと常々思っている。


(※ 健康中毒氏の個人的な見解です)

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