第11話 オジール「これって俺が悪いの?」
「で、わざわざ俺を呼び出してなんの用事だ?」
『光の覇道』リーダーのオジールはギルドマスターに呼び出されていた。
「いやなに、伯爵様からの依頼がどうなったのかと思ってな。
街に戻ってるとは聞いていたがなかなか報告が無いなと」
「報告ならあいつがやってんだろ」
「あいつ? ユージならパーティーから追放されたという報告は受けてる」
「ああ、役にたたないから追い出した」
「で、彼が言うには今回の報告やったら達成報酬がユージ自身にも出るから帰還早々に追放したんじゃないかって。
パーティーとして預かっていた荷物は全部渡したと、彼は言ったが?」
「ああ確かに。でも次の日には片付いてただろ」
「そのへんの事情は知らんが依頼の結果報告も納品もギルドとしては受けてない」
「じゃあ何だってんだよ」
「お前も子供じゃないんだから分かってんだろ。
40層ボスの『古代ゴーレム』倒しましたすごいね明日からA級冒険者だよ、とはならないんだよ。
今回の依頼はドロップアイテムがきっちり納品されて初めて達成だ。
つまりまだ依頼未達ということ。
期限に関してはまだ余裕あるんでもう一度ダンジョンアタックやるか街を走り回って持っていった誰かから取り戻すか、好きに決めるがいい」
「なんで俺様がそんなことしなきゃならねぇんだよ!」
「報告すらまともにできないって言うんならF級からやりなおすか?」
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「クソったれが!!」
夜、宿の食堂に『光の覇道』メンバーが集められていた。
事の顛末を一通り説明する。だいたいオジールの一方的な恨み節だが。
「次の依頼の話じゃないんですか」
「ギルマスの言い分は妥当」
「私ら悪くないよね。報酬は請求させてもらうからね」
【姫騎士】シャリア、【賢者】ティーキー、【重戦士】ピンスが言葉を繋ぐ。
彼女達はこの宿ではなく別の場所に居を構えている。
ダンジョンから出て街に戻った時点で解散してるから、ほんと3人に非は無い。
「ギルマスには少し待ってもらってる。
明日からちょっと街で聞き込みに走るから手伝ってほしい。
見つからなければ最悪もう一度ダンジョンに入る」
「え~・・・」
【氷雷魔術師】イノアが不満の声を上げる。
「聞き込みはともかく、ダンジョンアタックの前に今回の報酬貰うわよ。
あんたから」
「ん、今回は報酬が金貨200枚だから頭数6で割って金貨33」
「! 私も魔導書の取り寄せ手配しちゃったから、タダ働きはできないわよ」
ピンスとティーキーの話にイノアも乗っかる。
「わかった。明日朝には用意しておくから協力をお願いする」
依頼失敗・破棄ということになれば、違約金として金貨100枚の支払いとなる。
これが払えなければ額が額だけにツケは効かない。
借金奴隷一直線だ。
オジールにとっても、ここでパーティーが空中分解してしまったら人生が終わる。復活は無い。
自腹を切ってでも、とりあえず急場を凌ぐしかないというところだろう。
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翌朝から街で聞き込みを開始したが芳しくない。
冒険者ギルドで、いくつかの中~下級パーティーからランクに合わない魔石やドロップ品の買い取りが多数あったけど「出所は不問」として全部買い取ったと。
苦い顔をするオジールだが、「暴力事件なんて起きたら一番にあなたたちを疑いますからね」と先手を打って釘を刺される。
全員、こういう聞き込みは苦手とか経験が無いので2日目ですでに諦めムード。
夜のミーティングで、明日を準備に当てて明後日からダンジョンに入ることを全員一致で決める。
揃いも揃って全員脳みそ筋肉の戦闘狂、地味な聞き込みより体を動かしているほうが気楽というところなのだろうか。
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