第9話 わ~い、みんな大好きダンジョン攻略編だよっ!(タイトル詐欺) 


 午後まるっと時間が空いた。迷宮入って暴れてこようか。




 屋台でちょっと早い昼飯を食いながらそんなことを考える。


 薄いピザ生地に肉と野菜を巻いた、まるで太巻きみたいなやつ。

 食べ応え十分、ひとつでおなかいっぱいだ。


 おいしいので、今食べた味含めて全種類注文する。

 と言っても3種だけだけど。


梱包パック〉して〈ストレージ収納〉に納めて携帯食に。


 時間経過の無いストレージに入れるんだから〈梱包〉しなくてもいいんだけどね。



 ちなみにアツアツのピザや串焼き、スープなんかを〈梱包〉すると、薄皮1枚隔てるだけで熱はほとんど伝わらなくなる。

 保温もほどほど、朝に〈梱包〉したのが夕方に開けてまだ温かいぐらい。





 腹が満たされると、ささくれた心も少しは落ち着く。


 今日は1層から流して、10層あたりまでかな。

 20層まで行くと帰るのが夜中になりそう。



 世界7大ダンジョンのひとつ、『獄落ごくらく』はひたすら深い。

 歴代の最高到達層が80層ボス、現在現役チームは60ボスで攻略が止まっている。


 基本、石垣積みの直線直角な通路、部屋も四角い迷路迷宮、階層進むたびにエリアが広くなっていく。

 1層は2km四方、9層は4km四方ぐらいの広さ。

 ただ、書いたマップの上下左右が繋がってる構造だから一度迷うと実際以上の広さを感じる。



 10層はボスのみの1部屋で、上位ゴブリンのチームだ。

 ジェネラル率いる6~10匹チーム、ここを1パーティーで抜けられたら一人前、中級探索者だ。





 入ダン手続きを簡単に済ませて迷宮に入る。


 迷宮上層を軽く流していく。

 ゲーム的な感覚だと経験値低い、得られるもの少ないけど、クズアイテムとか低ランクの魔石でも錬金合成でわりと使うので、あればあるだけ欲しいもの。


 ダンジョンのドロップアイテムに関しては解体能力とかそもそもの素材になるモンスターとの戦闘にも気をつかわなくていいので、店売りで買い揃えても問題なかったりするんだ。


 オークとかを最大火力の魔法で消し炭にしても『肉』はドロップするし、その品質も問題ない。

 魔石なんかも敵のレベル・脅威度に合わせて品質も安定してるから、『迷宮産』ブランドとして売っても買っても安定安心。


 ただ、ドロップアイテム以外は手に入らないんだよね。

『血』とか『オークタン』とか。剥製にできるような死骸まるっと1体とか。




 他の冒険者の邪魔にならないように、2層3層と流していく。


 このあたりの階層なら、ざっくり見渡す程度の精度でよければほぼ全域が〈探査〉魔法の範囲に入っている。


 人は緑の光点、モンスターは赤の光点、宝物関係は黄色、ダンジョン構成物の中でも苔とか特別に探しているモノは青くマーキングしている。


 このへんの〈探査〉魔法は使用している人によって違うらしく、自分のはゲーム的なマッピング感覚に引っ張られてるんじゃないかなと思っている。




 7層に入ったとき、ちょっと懐かしい気配があった。

 元『光の覇道』メンバー、斥候のケールさんだ。

 彼女の実力からすると浅いと思うけど、一緒にいる今のパーティーメンバーに合わせているのかな。



 ちょっとあいさつしていこう。


 光点の動きを見ながら、長めの直線通路で出会えるように先回り。




「ケールさんおひさー、ポーターのユージっす!」


 短弓の射程の外から声をかける。


 こっちは灯りつけずに走りまわってるからモンスターじゃないかと警戒されてるなあ。

 特に同行してるパーティーメンバーに。


 うん、それ正解行動だね。




「今日は休み?」



「いんにゃ、追放された(笑)かっこわらい



「かっこわらいって・・・。オジール達それで大丈夫なん?」



「新メンバーも女の子ばっかりだし大丈夫でしょ。

 姫騎士なんて個人ランクAだし、オジールもイノアも今回で個人Aに届きそうだし。

 これで俺が抜ければパーティーの平均個人ランクBの上からA級認定。


 それになにより、40層ボスまで行ってきたけどD級の俺の指示も聞いてくれるし素直でいい子ばかりだよ。」




「ふぅ・・・、まああいつらのことはもういいや。

 で、あんた何やってんの?」



「ゴブリンしばくRTA?」



「あーるてぃーえー?」



「リアルタイムアタック、まあ本気でタイム狙ってるわけじゃないけど。

 10層まで行って日帰り予定」



「元気ねー、あんたひとりだと本当フットワーク軽いわよね。

 ポーターで10層ボスをソロで抜けることだけでも信じられないのに」



「30層ぐらいまでは荷物運びだけじゃなくサポート全般で役に立つと思うんで、ポーターが必要ならいつでも声かけてね」



「あんたの罠発見スキルが異常高性能すぎて本職のアタシが落ち込むのよ。

 パーティー追い出されることになった原因があんたのそのスキルのせいなんだから!

 専門職がその専門分野で運び屋に勝てないなんて、あいつに言われなくてもショック大きいわよ!


 あんたのごはんもおいしいし。



・・・ね、それはともかく明日の夜、飲みに行かない?」




「いいね、あいつら来ないところというと『白銀霊峰』とか?」



「高いわよ」



「値段分はきっちり美味しいし雰囲気落ち着いてるし個室もあるからね。

 奢るよ」




「もしかしてアタシのこと狙ってる?


 まあいっか。奢りはともかく、約束したわよ明日の夜。」




「おう。ケールも気をつけてな、この辺なら大丈夫だと思うけど。

 パーティーメンバーの皆さんもご安全に」

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