第8話 今さら俺に聞かれても知らねぇよっ!!

 

 翌朝。

 よく寝た。


 迷宮上がりに追放されて徹夜明けからの『魔女の森』まで探索。

 感覚的に20時頃にベッドに潜ったはずだけど朝までぐっすり。


 冒険者ギルドは朝の依頼貼り出しでちょうど賑やかな時間ってところかな。



 屋台で朝飯食ってからギルドに顔出してみよう。







 朝のギルドはまだ賑わっている。

 列はほとんど捌かれて1~2組待ちってところだけど空いてる窓口は無い。

 客が掃けるとどこからともなく補充される流れができている。





 皆に混じって依頼ボードを眺めてみる。

 迷宮ドロップ品の納品は今まであまり積極的に受けてない。


 手持ちのアイテムからいくつか納品できるものはあるけど、それやっちゃったら『光の覇道あいつら』が難癖つけてきそうだからな。


 建前上、ダンジョンにはパーティーについていって入るだけだし。

 そこでこっそりドロップアイテムちょろまかしてると思われるのは面白くない。


 実際ちょろまかしてるんだけど。

 正確にはバックアタック背後からの不意打ちを返り討ちにしたときのドロップアイテムだったり、休憩・野営時間にパーティーから離れて個人で狩ってるものだから文句言われる筋合いは無い。はず。




 パーティー募集に荷物持ちポーターの需要は無さそう。


 低層の荷物持ちならいくつかあるけど、ポーター舐めんなよってぐらい報酬低いしそれでも受ける人たちの仕事を奪いたくないし。


 荷物持ちポーターの職能を得ていなければ、30kgの米袋を背負って一日歩き回って、日当1,000円に届かないってところ。


 運び屋だけで生きていくには厳しい世界、さすが不遇職。


 きっちりレベル上げて育てれば重量軽減1,000分の1、1.5トンの車を1.5Lペットボトルぐらいの体感重量で運べるんだけど。


 さすがにそこまで育てるのは最下級でパーティー結成時から仲間入りして一緒にA級まで育ててもらえないと無理な話。

 そもそもまともに戦闘経験もできないし。




荷物持ちポーター』として役に立ちたいなら、まずは何をおいても最重要なのは『輸送量』。


 ポーターリュックに〈空間拡張〉〈重量軽減〉を、自分のマジックポイントが許す限り限界までかける。


 最大MPを担保に取られるというのか、補助魔法が継続している限り魔力を持っていかれ続ける。


 そうすると、荷物運びの他にできることなんてほとんど無い。

〈罠発見〉や〈マッピング〉なんかのMP魔力を使うスキルにまわす余力なんて無いし、司令塔になってポーション投げる役も相応に相互信頼が必要になるのでスポット参戦だとそういうのも厳しい。


 結果、かなり優秀だろうと並のポーターならついていくだけの存在になってしまうのは必然。



 ちなみに、常に続くが最大MPを底上げするトレーニングになっているのかどうかは、転移者特典なのか現地生まれが根性無しで安全マージン取りすぎなのかは検証しきれないのでわからない。





 掲示板の前で考え事してたら、ギルド受付のベルラさんに声をかけられた。



「ユージさん、今お時間よろしいですか?」



「『光の覇道』?」




「はい。

 談話室を用意してますので、そちらでお話できれば」







 ミーティングルームに案内される。

 6畳ぐらいの部屋に3m×2mぐらいの机、背もたれのない椅子が8脚。

 1パーティー招いて話をするのにちょうどいい、それ以外に何も求めない広さ。



 俺を案内したあと、ベルラさんは部屋から出た。

 なんとなく下座に座って待つ。



 ほどなくベルラさんが戻ってきた。

 資料っぽいものを小脇に抱えて、お盆にお茶セットを揃えて。




「まず、『光の覇道』さんの今回のドロップアイテムですが」


 ベルラさんが切り出す。



「まだ提出されてないんでしょ?」



「ご存知でしたか」



「ご存知てないですよ」



「え?」



「宿の食堂に荷物全部ぶちまけておきましたから。


 大事なものは目立つように机に並べましたけど、まる1日経っても回収しなかったから宿のマスターが捨てたんじゃないですか?」



「そんな・・・それじゃ・・・」



「僕が報告すればパーティーメンバーとして報酬の配分が発生する。

 それを嫌って迷宮から出て早々に追放したんだから、報告するのはあいつらの口からでしょ。


『古代ゴーレムの駆動核』、そのうちギルドに売りにくる奴来ますよ」



「・・・わかりました。『光の覇道』からの報告を待ちます。」





 めんどくさい話だ。




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