第7話 ここが俺のハウスだよっ!
冒険者ギルドを出て
日が落ちてディナーを求める客で賑わいはじめている。
もうちょい早く戻ってくるべきだった。
案の定、ほとんど片付いてなかった。
宿屋のおっさんは怒りが有頂天(※誤用)だった。
まあ当然『光の覇道』にすべて押し付けて、背負い袋だけ回収。
「落し物はてきとーに欲しい人に配っちゃえばいいんじゃないかな」と、食堂全体に行き渡る声で告げておく。
お客さんの空気が変わったな。良き
あいつら、自分たち個人の私物だけ部屋に持って上がったようで、今回の依頼の討伐証明も金になる回収素材もまだ残ってる。
そこに手をつけてない、まったく言及してないのは店主が見てるし俺の味方してくれるだろうと皮算用。
これ持って行かれたら俺的には面白いことになる。プヒヒ
少なくとも今日は誰も報告のために冒険者ギルドに行ってないというわけだ。
一応、魔法で〈追跡〉できるようにこっそり〈マーキング〉だけはしておこう。
使わないに越したことはないけど、後始末は必要になるかもしれない。
宿代の前払い分はそのまま納めてくれと。
〈ストレージ収納〉を持ってるから基本、部屋にはほとんど私物を置いてない。
ベッドと枕に魔石を埋め込んで〈快眠〉〈安眠〉を付与してるが、備品に勝手にやってることだ。
この部屋に泊まった客が快適な目覚めでこの宿を気に入ってくれたら俺も冥利に尽きるというもの。
こんな小さな貢献でも、というか気付かれない貢献が出来るのがたまらなく嬉しい。
というわけで我が家に帰ろう。
下級住宅街の中でもスラムに近いところだけど、一軒家を構えているのだ。
『光の覇道』パーティーのみんなには内緒だよっ!
どうにも宿暮らし、ホテル生活というものに慣れなくて。
帰る家が欲しいというのはこっちの世界の人の感覚と少しずれてるみたい。
変わり者扱いされるほどでもないけど、ただの田舎者だと。
貧乏村から来たオジールたちに田舎者と言われる理不尽。解せぬ。
小さいが賃貸じゃない俺の持ち家、一国一城の主だ。
1階の半分以上が作業スペース。奥3分の1ぐらいのエリアに風呂とトイレと台所。
風呂はお湯を溜めて足を伸ばして入れるサイズ。
日本人だからな。風呂にはこだわる。
使った回数で言えば娼館のお風呂でスッキリ綺麗にしてもらった回数より少ないけど。
2階部分は手前の階段があるエリアを広めのリビングにして、そこから寝室的な6畳個室を3部屋。奥2部屋はベッドと机に魔石ランプも用意して誰かお客さんが来ても泊められるようには準備している。
ベッドに布団は置いてない。必要なときに清潔なベッドメイクが出来るように〈空間拡張〉した押入れに用意している。
家の立地に関しては結構治安の悪いエリアなんだけど、家屋と土地に軽い認識阻害をかけているので「そこに誰かの家がある」以上の興味を持たれていない。
はず。
言ってみれば、マンションの同じ階のふたつみっつ離れた部屋。
毎日のように玄関扉の前を歩いていてもなんの興味も無い。表札が出てても誰が住んでるか苗字も知らない、みたいな。
ひさしぶりに風呂に入ろう。
お湯の中で足伸ばしてゆっくり癒される気持ちよさは、〈疲労回復〉魔法とは別物だ。
目を閉じて〈システムコンソール〉から〈ストレージ錬金調合〉メニューを立ち上げる。
作成可能リストから、難易度高めで材料がやや足りないものから目を通す。
これを見ているだけで次の目標ができる。すごくたのしい。
すでに所持している素材にロックをかけて確保していく。
急いで作らなくてもストレージ内に確保しておけば時間経過は無いからな。
クマの肝や血を使った強壮剤は文系仕官に大人気、王都・王城のエリート様たちの御用達なのだ。
看板になってもらってるゴヨウ婆さんの評価上がりまくり。
俺が作る『最高級
飛び跳ねる『
ある意味地獄。
栄養ドリンクあるある、元気の前借りという表現がぴったりくる「時間切れ」のテンション急落はお決まりのワンセット。
もちろんそのへんのケアは抜かり無し。
『安眠導眠ポーション』もセット販売だ。これ飲まなきゃ危険が危ないぐらいは強めに言い聞かせている。
6~8時間、気を失ったような深い眠りを経てすっきり復活できるんだから、有事に備えて本数揃えるのは良い保険になると思う。
最高級じゃなければそれほど高額設定していない。まあ日常的に常飲しないようにと思ってやや高めに価格設定しているんだけど、俺提供最低ランクの『下級元気ポーション』銀貨5枚(5,000円)でもあるだけ売れるんだよなあ。
〈
効果時間2時間で12分ほど余分に動けるって程度なはずなのだが。
あと、『安眠導眠ポーション』も人気。
これは最高級だけじゃなく低級まで各種取り揃えてるけど、けっこう特殊な素材を揃えないと作れないので面倒なのだ。
俺は〈ストレージ調合錬金〉でそれなりに簡単に作れるけど、ゴヨウ婆さんにレシピ伝えたら呆れられたぐらい。
こんな金額で提供してたら利益ゼロ、取り分が無いって。
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新ジャンル【潤滑油】
追放ざまあ系の一形態。
積極的な復讐に出るわけでもなく、追放した側が主に主人公ひとり居なくなっただけで自滅してボロボロになっていくお話。
普段は恩恵感じてないのに、切らしてからタイヘンなことになる潤滑油。
一人暮らしを始めて初めてわかる、お
仕事がまわらなくなることを見越して、一歩引いたところからニヤニヤ見守る若干の底意地の悪さまで【潤滑油】ジャンルに含めたい。
さあみんなも3~5年(バイトなら半年?)働いて、戦力になったところでバックレよう!
それを踏まえて、面接で「潤滑油になります!」と宣言しよう!
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