第3話 これって俺が悪いの!?

 12才の【成人の儀】を受けた20歳の俺、神山悠司(かみやまゆうじ)。


 何を言ってるのかわからないと思うが、言ってる俺もなにがなにやらわからない。



 手荷物は何もない。ポケットにスマホと財布ぐらい入ってるけど、こちらで使えないならおそらく無一文。


 これから、全くわからない。




 言葉が通じるのが救いだが、この町の名前も今の国の名前もわからない。


 おそらく若返ってるけど、この歳で働き口はあるのだろうか。

【成人の儀】とやらをやったんだから、もう成人扱いしてくれるのかな?




「おいポーター、俺と一緒に冒険者になろうぜ!」


 道の真ん中(!!)で悩んでると、なんか囲まれて声をかけられた。



 これがオジールたちとの腐れ縁の始まりだ。

 この町で冒険者登録してランクを上げ、ダンジョン都市に入ることができた。


 10年でAランクに手が届くところまで、記録的な早さとまでは言わないけれど順風満帆だったんじゃないだろうか。






 思えば、20歳でこの世界に飛ばされて、そこから10年か。

 もう30歳なんだよなあ。


 ちょっとしんみりしつつ、グラスに残った酒を呷る。

 ちょうど夜が明けようとしている路地に出る。




 街が目覚める。

 この時間は好きだ。


 徹夜の1日や2日はなんでもない。

 冒険者なんてやってたら、まとまった休憩時間も取ることできずに数日に渡って命を狙われ続けることも無くはない。


 そこまで追い込まれる状況もなかなか無いし、好き好んでわざと体をいじめて持久心鍛えるとかそういうMっぽい趣味も無い。





 冒険者ギルドに向かう。

 本日の依頼表の張り出しにはまだ時間があるからこの時間は空いている。


 ギルドの受付で、受付さんが暇そうに書類仕事を進めていた。

 今日の夜番はベルラさんだ。



「おはよう。」


 ベルラさんに声をかける。



「ユージさんおはようございます。

 この時間に依頼の報告ですか?」



「ん。依頼じゃないけど報告。

 俺、『光の覇道』パーティーから脱退することになったから。」



「えぇ!

 何をやらかしたんですか!?」



「俺!?

 ただオジールに嫌われてただけだよ。荷物持ちとしてついていってただけだし。


 力戦派のオジールとは音楽の方向性が違ったんだ」




「音楽?

 ユージさんのサポートが無くなってパーティー回るんですか?」



「そこを考えるのはリーダーのほうで、俺は追い出された側だよ」



「いらないって言われて、なんですぐ簡単に受け入れちゃってるんですか!

 この依頼の報告でAランク昇格は確実って言われてるんですよ?


 今までやってきたパーティーに未練は無いんですか!?」




 なんで俺が叱られてる?


 解せぬ。 

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