第2話 成人式ってそうじゃないだろ!

「そういうわけだから、背負い袋バックパックの中身全部置いてけ」



 言われるまでもなく、袋の中身を事務的にぶちまけていく。


 今回のドロップ品や討伐証明部位、解体の済んでない魔物、武器や宝飾品なんかの彼らのコレクション。


 携帯食料やポーション、大型テントなどは置いていく。




「これぐらいは持っていかせてもらう。

 俺が自腹で買ったものだ」


 魔導コンロ2台と鍋セット、解体ナイフ、自衛用の鉄木棍てつぼくこん

 あと野宿用の敷きマットと細々としたそれなりの雑貨。

 雑貨類は基本実用本位なもので、宝飾的な価値は全くなさそうに見える。


 予備のずた袋に突っ込んで、でかいバックパックは置いていく。

 ずた袋は銅貨5枚(50円)程度だが、俺のはきっちり空間拡張と重量軽減を付与している。




 オジールが小さい袋を投げ渡してくる。見た目より重そうだと思ったら、中身は金貨で10枚だった。


 退職金代わりというには、ちょっと腹が立つ程度には少ない。

 思わずため息が漏れる。



「不満そうだな」




「当たり前だろ。

 今回の遠征で使わず残った、今机に並べてるポーションだけで金貨30枚は下らない。

 その金どこから出てると思ってるんだ。


 俺が10年やってきた評価って、この程度なんだな。」




 金貨10枚(100万円)を投げ返す。


 背を向けて大きく伸びをして、肩をまわす。

 背負い袋バックパックにかけていた〈重量軽減〉〈空間拡張〉の継続魔法を解除。


 魔法継続の担保に取られてた最大MPが返ってくる。

 全身に力がみなぎる。




 何か怒鳴っているがもう知らない。

 定宿のおやっさんへの挨拶も夜が明けてからでいいか。


 宿の食堂散らかして怒られるのはオジール一人でいいや。軽ざまあ。




 夜明けまでは時間があるし、どこか朝までやってる酒場にでも飛び込んで朝まで時間を潰そう。


 夜風に当たりながら、ここに来た当時のことを軽く思い出していた。







 俺、神山悠司(かみやまゆうじ)は大学生だった。


 正月、実家に帰ってそのまま成人式に出る。

 久々の地元の友人、近所なのに疎遠になってる中学の頃の友人と再会して話が盛り上がる。


 小学校校区の友人は歩いて家に寄れるんで、初詣に付き合ったり庭でBBQとかそれなりに交流は続いている。

 なにより親同士の近所付き合いも続いているのが大きい。


 高校の友人はついこのあいだまでクラスメイトだったから懐かしさなんて欠片も無い。


 盛り上がるのはやっぱ中学のクラスメイトだな。

 5年ほどだけど、とは言えほんとに連絡もしてないし。



 成人式終わったらその頃の友達全員集めてカラオケ行こうということになって連絡先を交換する。



 でかい市民体育館に詰め込まれて、県知事さんとか偉い人のありがたいお話を立ったまま寝ながらぼんやり聞き流す。


 背中を小突かれて自然に前に進む。自分の番まであと数人だ。



 ごく自然に何かが変わったけど、頭がそのことを理解するまで、驚くまでしばらく時間がかかった。


 いっしょに列に並んでいるのは中学生ぐらいか。

 自分の目線も同じぐらいの背丈に見える。



 今から受けるのは【成人の儀】というもので、成人年齢12歳を迎えると神様から《職能ジョブ》と、その《職能ジョブ》にあわせた《技能スキル》を与えてもらえる。



 ごく自然に、神官さんに導かれるままに儀式を行い、【運び屋ポーター】を授かった。


 流れに流されて教会?から押し出されて日の光の暖かさを感じて、ようやく我に返る。





『成人式』がつながった、だと?





――――――――――――――――

健康中毒世界(1)


金貨1枚=銀貨100枚=銅貨10,000枚


金貨1枚 10万円

銀貨1枚 1,000円

銅貨1枚 10円


100倍単位にするのがすごく好き

間に大銅貨100円、大銀貨1万円を挟んで、10円未満は賎貨として賎貨1枚1銭(0.1円)

金貨・銅貨が地球基準の価値感で、きりのいいところに銀貨を。


半大銀貨(=銀貨5、5,000円)みたいな発音が重たい単位は、自動翻訳の弊害せいということにしておく。



ゲーム内世界の話だと、CL(クレジット)とか独自単位を設定したり。

1CL1円が感覚的にわかりやすいかなと。

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