第27話

「ヒナちゃーん! 真壁ちゃーん! 何揉めてるの?」


私と日向がBLにおけるライバル出現の必要性有無について熱く討論していると、空井君。そして、旭陽太君が現れた。


「やっ、その……」

「取り立てて、ご説明する程の内容ではありませんので……」


日向と私は内容が内容だけに、しどろもどろになって口篭もる。


「それより、空井! 真壁のヤツが頑固でさ~」

「えっ、何々? どうしたの?」


頑固って……それはこっちの台詞なのだが!?


「夏休み、四人で遊ぼうって話しただろ? なのに、真壁は行きたくないって」

「え~、なんでよ真壁ちゃん~。せっかくの大学生初の夏休み、一緒に楽しもうよ~!」


いや、ですから……私、空井君と旭君とそんな仲良く無いじゃないですか……。


「やあ……その……私、インドアなので……」

「え~、そんなこと言わないでよ~!」

「そうだぞ! 俺だってバリバリのインドアだけど、今年の夏はアウトに繰り出してみようと思ってんだ! お前も付き合え!」


お前だけで行け日向っ!!

しかし、今回はイヤにしつこく誘って来るな……日向にしては珍しい。何か遊びに行く以外で、企んでることでもあるのか?


「真壁」


私が日向の思惑を勘ぐっていると、まさかの旭君から声が掛かる。


「日向と、ヒデがこんなに頼んでるんだ。なんとか都合、つけられないか」


そして、こう言われてしまった。無表情で、無機質かつ感情の読めない重い声で。


「あー……まあ、都合は……その……」


それがなんか怖くて、私は今まで日向と空井君には使えていた台詞が口から出すことが出来ず。


「大丈夫かと、思います……はい……」


思わず了承してしまったのだ。

旭君怖ぁぁぁぁぁ!! なんかメッチャ怖いんだけど!? イケメンって、あんな恐ろしいものなのかっ!? 世の女子達は、こんなおっかないものを追いかけているのかっ!? スゲーなっ!! 尊敬するわっ!!


「ヤッター! これで、夏休みの予定はばっちりだな!」


空井君、何が? 何がどう、ばっちりなの!?


「今年の夏が楽しみだな!」


日向、私は今この瞬間から逃げ出したい気持ちでいっぱいなんですが……。

戦々恐々とした気持ちでいると、旭君と視線が交わる。

彼の双眸は、冷たい色を帯びていて。すぐさま目線を逸らされてしまうが、私の心を凍りつかせるには充分な威力であった。


(これほどまでに、夏休みが楽しみに思えない日が来るなんて……)


憂鬱だったテストが終わったにもかかわらず、私には新たな悩みの種が芽吹いてしまうのだった。

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