第14話

日向と本屋に行った帰り、偶然鉢合わせした旭君と空井君と共にカフェに行くことになってしまった私であったが。意外にも、自身の不安を余所に、楽しい一時を過ごす結果となった。

そして、帰宅し。私は本日の戦利品に目を通す。

お気に入り連載コミックの最新刊、気になっていた作品のまとめ買い。

読了のミッションは長時間にわたるかと思われたが、引き込まれてしまう物語は。私に時間の経過を気にすることを忘れさせてしまったのだ。


「ふぅー……読み終わってしまった……」


溢した息は幸福感からこぼれながらも、最初に出た感想の言葉は。読み終わってしまったことへの寂しさだった。

漫画も小説も、素敵な作品に出会い。読むことには大いなる喜びが生まれるが、最後のページを読み終えてしまった時の物悲しさは。内容が素晴らしければ一入ひとしおである。


「続き楽しみだなぁ~」


自室のベッドに寝っ転がりながら、購入した漫画本を枕元に散乱させ。私は一人きりの空間であるのを良い事に、だらしない恰好でだらしなく顔をニヤつかせた。


(そういえば、さっき読んだ話。主人公達がくっ付くかくっ付かないか……の瀬戸際な時、恋のライバルキャラが出現して。二人の恋が大きく前進するって展開があったなぁ)


という事は、もしかしたら。友人Aこと、空井君は。現時点で、旭君の片想いでしかない日向との恋を盛り上げるかませ犬ポジションになる可能性が……。


(いやいやいやいや!! さすがに、そんな都合の良い展開。現実では起こらんやろ~!)


二次元と三次元を混合させる程、私は現実の見えていないヲタクではない……はず、なのだが……。


(けど、昔のどっかの偉い人が“事実は小説より奇なり”って言ってたっていうし)


絶対にありえない……とも、言い切れないのでは?


「これは……」


日向と旭君だけではなく、空井君にも注意を向けて置く必要があるのではなかろうか……。


「フフッ、私の目の黒いうちは。誰にも二人の邪魔を――」


私が決意を胸に、カッコつけながら言葉を溢していると。部屋のドアがガチャリと開いた。


「――姉ちゃん、母さんが早く風呂入れって」


デリカシー無く、姉の部屋に入ってきた弟に。


「ノックくらいしろよー!!」


と、私は羞恥心を誤魔化すように声を張り上げるのであった。

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