第13話
「じゃあ、ヒナちゃんと真壁ちゃんって。高校からの友達なんだ!」
引き続き喫茶店にて。
私、日向葵、旭陽太、空井(下の名前知らない)は。私と日向の昔話に盛り上がりを見せていた。
「そう。真壁とは、高校から三年間クラス一緒で」
「なんか、自然と普通に仲良くなってたよね」
男子が苦手だったから、高校時代もそれ以前も。積極的に男子と関わり合いを持とうとは思っていなかったけど、日向とだけは。なんか妙に気が合って、二人で遊んだり放課後一緒に帰ったりしてたっけ。
私は空井君と日向と会話をする傍ら、旭君を盗み見た。
彼は、いつもより少し暗い無表情で。ストローに口を付けたまま、目の前にあるテーブルへ視線を落としていた。心なしか、若干両肩も下がり猫背気味な気がする。
(旭君、日向と高校時代を過ごしたかったんだろうなぁ……だが出身地と高校は仕方の無いこと、許されよ……)
私は旭君に謝罪の気持ちを一方的に送りつけた。
「そういう旭と空井ってさ、大学からなんだろ? 出身違うしさ。けどメッチャ仲良くね?」
確かに……いっつも一緒にいるイメージ。
「あー、俺と陽太。家が隣……あっ、アパートの部屋ね! お隣さんなの! なっ、陽太!」
「あぁ」
空井君の声に、旭君が頷く。
「へぇー、そうだったのか」
「大学から一駅くらいの距離でさ。多分、俺ら以外にも同じ学校の人居るんじゃねーかな? あっ、ヒナちゃん今度遊びに来る?」
「おっ、良いな! 面白そう!」
盛り上がり始める日向と空井君をボーっと眺めながら、私の思考は。
(旭君と空井君は、同じアパートのお隣さん……)
という事実から。
朝は「あっ、陽太!」「おう……」と玄関でばったりと出くわして、そのまま大学へ登校。大学内では、授業が別々でない限り二人はいつも一緒。(それは、目撃している純然たる事実)
大学が終わってからは、「あっ、陽太。今、帰り?」「あぁ」「一緒に帰ろうぜ! どうせ、一緒の場所だし!」「うん」と二人並んで歩く帰り道。
そして、夜は……。
「陽太! 飯、一緒に食わね?」
「良いけど」
「サンキュー! 一人飯って、寂しいからさ」
「そうか?」
「……なーんて、ホントはさ。陽太に会いたくなっちゃって」
「? 朝から会ってるだろ」
「朝も昼も、夜もずっと……俺は陽太に会いたいんだよ」
言いながら、空井君は旭君の頬に手を伸ばし。
「だってさ、好きな奴の傍には……ずっと居たいって思うもんじゃん?」
と、旭君を視線で捉えながら。彼の唇に、空井君は自分のそれを――
(ぬのおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!! ダメだー!! 許さん、許さんぞー!!)
あらぬ方向へと妄想が暴走して行くのであった。
(旭君には日向という人が居るんだ! 横恋慕など……展開的には美味だけど、旭×日向推しとしては許さん!! ついでに、日向の友人としても!!)
内心では、そんな激しい感情を沸かせながらも。頭では、ただの自分の根拠の無い妄想であることは分かっていた。
けれど無い訳ではない、とも言い切れない……そうも思っていたのだ。
(旭君の日向への想い、二人の尊き恋物語は。私が絶対に守ってみせる!!)
私は勝手に、そう強く一人で誓いを立てるのであった。
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