第6話

「日向ってさ、最近。旭君と仲良いよね」


ある日、大学からの帰り道。日向葵と共に本屋へと向かっている道中、私は何気ないふうを装い日向にそう尋ねた。


「真壁、まさか俺と旭で妄想してんのか?」

「えー? 友人でそんなことぉー、するわけないじゃーん」

「言い方に説得力がねーよ」


てか、妄想じゃなくて現実で展開されてるんだけどね。日向の知らないところで。


「旭とは、春にアイツに本拾って貰ってから良く話すようになったってだけだよ」

「学校一のイケメンと?」

「別に、イケメンだけど芸能人ってワケじゃねーんだから。変な話しじゃねーだろ?」

「いや、そういうシチュエーションのBLあったなぁーって」

「アレはヤバかった。内容も尊かったけど、攻めと受けの葛藤とかが可愛くて……じゃねーよ!! やっぱ、妄想してんじゃねーか!!」


日向の声に、私はふいっと明後日の方向へと顔を向ける。


「まあ、俺はともかく。旭に失礼だから止めてやれよ」


いや、その旭君が私に萌えを自主的かつ積極的に提供してくれてるんだが……。


「アイツ、俺の落とした本の内容少し読んじゃったら。キスシーンで顔赤くして固まったりするぐらい結構初心なんだからさ」


何その新事実、可愛いな。赤面初心攻め……うん、悪くない。


「けど、俺が腐男子って分かっても。変な目で見ないで、友達として普通に接してくれるスゲー良い奴なんだ」


友達と思っているのは日向だけで、普通に接していると思っているのも日向だけだがな。


「だから、旭が不快に思うようなことは絶対にすんなよ!」


そう強く言う日向に、私は。


「勿論、旭君にバレるようなヘマは絶対しないから安心せよ!」


と、言い。


「いや、俺の言ったこと何も理解してねーじゃん!!」


そう声を荒げる日向を横目に。


(旭君、これは押せばいけそうだぞ……)


と、様々なBL本の馴初めエピソードを想起させながら思うのであった。

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