夏季

@potato2222222222222

夏季

夏が嫌いだ。肌がチリチリと焼けるほど鬱陶しい日差し。暑さのせいでじわじわ湧き出る汗。衣服がべったりと肌に纏わりついて気持ち悪い。蝉は求愛のため引切り無しに鳴いている。夏が嫌いな理由をあげるとキリがない。

頬杖をついて窓の外を眺めているとグラウンドで他クラスがサッカーをしているのが目に入った。

今日は生憎の快晴だ。

「こんな日に体育なんて...」

この暑さでの体育だ、同情する。

私は夏が好きと言う人間が理解できない。どこがい良いと言うんだ。

「北川!」

「いてっ。」

少し怠そうな声で名前を呼ばれたと同時に、ぼーっとしていた頭に突然軽い衝撃が走った。担任の大津だ。

「お前、これでなん回目だよ。この教科書はお前の頭を叩く為のものじゃないんだぞ。」

「......一々叩かなくたって。」

私は小さく呟いた。

「なにか言ったか?まぁ、とにかくお前も少しは気を引き締めろよ。」

「はい...」

大津は国語の先生で、国語の授業での恒例行事になりつつある。周りの生徒も最初は笑ってみていたが、最近は冷たい視線を送ってくる。涼むには丁度いい…なんて一瞬バカな事を一瞬考えたが、そんな事を考えている場合ではない。冷めた目で見られるのも仕方がない。もう高3の夏だ。真面目にやらないといけないのは解っている。だけど、どうしても夏は、夏だけは集中出来ないんだ。私がこんなにも夏を嫌うようになったのは5才の夏が始まりだった。


その夏はやけに暑く感じて、なかなか寝付けない日が多かった。

「おかぁさーん...暑いよー...。」

「夏なんてこんなもんよ。我慢しなさい。」

「...うん。」

これが始まりだった。くだらなさ過ぎる。これがひねくれにひねくれて、今だ。きっと漫画や小説だったら夏が嫌いな理由でさえ失恋や、大切な人の死なんかで書くんだろう。

だけど実際はそんなんじゃない。ものを嫌いになるのなんてきっと、全部些細な出来事が原因なんだ

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