【最終話】 11月26日――今日は何の日?
いくら考えても決定的な恋の瞬間なんてわからなかった。ひまりが俺の事を恋愛対象として好きかも確信が持てない。
もう振られるのも覚悟して、良さそうな日にデートに誘って告白するか……。でももしも、ひまりに振られたら俺は―――
すたすたすた~
がちゃっ
「さっくん、ただいま~」
悩んでいたらひまりが帰ってきてしまった。手に何か大きな箱を持っている。
「おかえり、ひまり」
「さっくん、ケーキ買ってきちゃった~」
とても嬉しそうな彼女の顔。声が喜びに跳ねている。
「へっ?なにそのおっきそうなやつ。今日何かあったっけ?」
「へへっ、今日は1年の記念日だから」
「えっ、何の? ここに住んで1年の?」
さっきまで思い返していたのに、何のことか全くわからない。
1年前? そんなのまだひまりがここに来てそんなに経っていない頃――
「え~それは違うけど。へへへっ、内緒~」
ひまりは意味ありげに笑う。一体何の記念日だろう?
俺が首を傾げていると、ケーキを冷蔵庫に入れたひまりが俺の腕の中に飛び込んできた。
「ねぇ、さっくん。聞いて欲しいことがあるの」
「んー、なに?」
キラキラと輝く彼女の瞳。歓喜に満ち溢れている。楽しいことでもあったのか。
何かもふもふしたものでもあったか?
「私ね……さっくんの事『愛してる』
私は自分の言葉に嘘はつけない。『好き』は色んな意味でいっぱい伝えたことはあるけど、この言葉は初めて言うし、恋人のさっくんにだけにしか言わない。
愛してるよ、さっくん。私の『彼氏』になってくれてありがとう。私、さっくんと一緒にいられてずっと幸せ~。へへっ 」
直球な彼女の言葉は確かに俺に伝わった。
胸が熱く痛くなるほどに。
――――なんて事だ。
全部先を越されてる。
両想いにこだわって、躊躇して、本当は告白して今の関係性が壊れるのが嫌だっただけの超絶チキンな自分。
俺の愛するウサギは意外と恋愛上手で、
気持ちを嘘偽りなく言葉に乗せて
真っ直ぐ伝える勇気がある。
そういえば―――彼女の恋が片思いで終わったところは見たことがない。
彼女はいつも好きになったら一直線に気持ちを伝えていたから。
「俺もだよ。
ひまりが俺の恋人でめっちゃ幸せ」
この言葉で伝わるだろうか。
言えなかった『好き』も『付き合って』も『愛してる』も。
結局俺はただの弱虫で口下手のヘタレだ。
「ふふふっ。やったぁ!」
彼女が本当に幸せそうに笑ったので、俺はひまりにキスをした。
いつもの軽く触れるものではない恋人同士のキス。
とびきり甘くてとろっとろに溶けるやつ。
この違い、彼女にはわかるだろうか?
いつの間にか恋に落ちた俺とウサギ。
これから俺はこのウサギを恋人として守っていく。ずっとずっと。家族になっても。
今日は何かわからないけれど1年の記念日で、
――俺達が確実に距離を縮めた日。
おしまい
★作者より★
最後まで読んでいただいてありがとうございました(*^^*)
11月26日がひまりにとって何の日だったかはご想像にお任せします。次のページのおまけにひまりの記念日一覧をつけておきますね。よかったらご覧くださいませ。
彼等の今後は
ラブラブは続編(書くかわかりませんが)
もふもふについては『もふ・もふ』で書きます。笑
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます