目のやり場に困る≪夏≫~そしてまた≪秋≫
暖かさを通り越してむしむしと暑い夏。
暑くなったらその分着る服の枚数が減るのは当たり前だが、同居しているのは異性なんだからもう少し気を遣って欲しい。気持ちがなくても男は女の子に手を出せるんだ。
最近のひまりの風呂上がりの格好はキャミソールに短パンのみ。その格好で寝るし遠慮なくくっついてくる。本当に勘弁して欲しい。
「ひま人、もうちょっと肌隠して? 」
流石に文句を言ったら
「さっくん、嫌~? だって暑いんだもん」
と上目遣いに見てきたのでため息だけ返した。
嫌じゃない。真面目に困ってるだけ。
◇
別のある日は買い物から帰ってきて、何やら着替えているなと思ったら急に水着姿で目の前に現れた。
「ねぇ、さっくん、この水着どうかなぁ? 」
白地にピンクと水色の花柄のビキニ。淡い色のそれはひまりに良く似合っていた。
小さな身体に白く細く伸びた手脚。胸の膨らみはほんの少しだが、ウエストは折れてしまわないか心配になるほど細い。でもおしりは柔らかそうで……。
似合い過ぎていた。もうとても妹とは思えない。かなり目のやり場に困って目を背ける。
「……それで外出るなよ? 」
「えっ? 遊べないじゃん。あっじゃあ、これ着てさっくんと一緒にお風呂入ろうかなぁ? 」
「ほんとマジ勘弁して……」
最近、理性が崩壊しそうだから、これ以上何もしてこないで欲しかった。一緒にいるだけで胸の鼓動が高まる。
俺の言葉にひまりはかなり不服そうだったが、水着を着るような外出はしなかったようだ。一体何のために水着を買ったんだ?
◇
キスして欲しいサインも、抱き締めて欲しいサインも、もう全部わかるからこたえられるときはこたえてあげる。何故なら俺もしたいから。
逆にサインが出ていなくてもついしてしまう事もある。しまったと思うけれど、その後の彼女の顔がすごく嬉しそうだからまたしてしまう。
夏の終わり位かな? 俺が自分でも自覚して彼女の言葉に『俺も好き』って心の中で返し始めたのは。
◇
秋になって、
よくわからない彼女の『もふもふ欲求』を満たすために色々協力したりもした。
元々彼女は動物好き。思いきり『もふもふ』したものに触りたいらしいが、猫アレルギーのために猫カフェに行けないらしい。ちゃんと病院に行って薬をもらえ。
ひまりの笑顔が見たかったから、俺も仕方なく『もふもふ』を研究した。時には自分ももふられて……。全く、もふられる動物も大変だ。世の中のもふもふ達よ、ご苦労様。
まだ正式な告白をしていないのに、『もふもふセラピー』とかいう変なコントをさせられて、愛の
でもそのとき、「さっくん『好き』とか全然言ってくれない」って不満そうにひまりが言ったから、この子も俺の事を恋愛対象として好きなのかと思った。
『もふもふセラピー』後のひまりは物凄くご機嫌だったから、結局ねだられたらまたやってしまうかもしれない。この子のおねだりには逆らえない。惚れた弱みだ。
◇
さて、もうひまりと一緒に暮らし始めて一年になる。
クリスマスも年末年始もバレンタインもあったし、それなりに一緒に過ごした。でも、外でのデートも何もしていないし、ちゃんとしたイベントの思い出を作っていない。
写真だって1枚も撮っていない。小夜の写真がスマホの思い出機能で勝手に画面に出てきても、もう切ない気持ちにならなくなったのに。
そもそも俺自身が『告白』をしていないから、この関係は何なのかわからない。ひまりの『好き』は本当に恋愛感情の好きなのか?
何にでも『好き』と言うこの子。キスもハグもただ人肌が恋しくて求めていただけだったらどうしよう。彼女にとって自分はただの安心安全な『お兄ちゃん』的存在だったら。過ごした時間を思い出してみても結局100%の自信はつかなかった。
俺はいつ自分と彼女が恋をしたのか思い出して、確実に恋人同士になれる告白をしたかった。
動物にする軽いキスとハグだけではもう足らない。本当の恋人同士になりたい。
俺達が恋をしたのは―――いつだ?
それともまだ恋していないのか?
恋愛感情で『好き』なのは俺だけ?
告白はいつするのが正解?
大事なものを失うのがこわすぎて……――――俺はたった一言が踏み出せない。
★作者より★
次話が最終話です。
今回の話に出てきた『もふもふ欲求』の話は別小説『もふ・もふ』に載せてます。
『もふ・もふ』おうちでもふもふ欲求を満たす甘ーいお話♡
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