第15話 クランへGo!
ブランから北へ馬で2日程の距離にある街バリツ。
装飾品や服の生産が盛んなこの街は〈
中々に大きなこの街には、ギルド支部が無く中央区に大規模なクランが一つだけあり、街の平和はこのクランによって守られている。
このクランこそアーサーが率いる〈円卓の騎士〉だ。
ギルド支部が無いのはギルド本部からのアーサーとメンバーの信頼が厚いというのもあるが、〈円卓の騎士〉内の受付にギルドから派遣される受付嬢がいるからというあり、この受付嬢に魔道具で直接〈円卓の騎士〉宛の依頼が届くようになっている。
ハクア達の見舞いから2日後、予定通りに2日で体を治したアスクはアリアと合流したのちこの街へ向かっていた。
目的は勿論ユーリの護衛依頼の時の報酬であるアーサーとの手合わせの為だ。
当初はハクアからもらった石を調べるついでにグレイスの依代となるゴーレムを作成しようとも考えていたのだが、グレイス本人からの提案で先ずは強者との戦いを優先することになった。
「じゃ、私は魔道書見てくるから。行ってこーい」
「ハァ...了解」
付いてくる気配が一切感じられない魔法使いと路地で別れアスクは一人で向かう事になった。
クランへと向かう途中で煌びやかな格好をする人ばかり見かけたが特に気にもせず歩みを進める。
別れてから特に時間もかからずクランへと到着し、目を奪われた。
デカかった。
城なんじゃないかと思うレベルでデカかった。
実はこの街に入った辺りから見えてはいたのだが、領主の城か?と思うだけでそこまで気にしてはいなかった。
いちクランの居住地が城と見間違えるくらいの大きさなど誰が予想するだろうか。
本当にクランなんだよな?と不安になりつつも扉をノックする。
「どうぞ〜」
ノックしてから直ぐに返事が返ってきたので、間違えては無さそうだ、と安心して扉を開く。
中に入って直ぐ目に入ったのは酒場のような見た目の中だった。
外見からはおよそ想像できないその光景に少し唖然としつつも、受付を兼ね備えているカウンターへと歩みを進める。
おそらくはクランメンバーであろう人々に注目されながらも臆する事なくアスクは受付へと到達した。
「ようこそ、クラン〈円卓の騎士〉へ。私はクランメンバー兼ギルドの受付嬢ヴィヴィアンです」
「Aランク冒険者のアスクです。今日はアーサーさんに用があって来たのですが...」
「はい、アーサー様からお話は聞いています。現在アーサー様は幹部の方々と会議中ですので、3階の客室へ案内させていただきますね」
受付脇の階段から居住区となっている2階を通り3階へと向かう途中で1人のクランメンバーに声を掛けられた。
「あれヴィヴィアン嬢、誰ですかその人。うちのメンバーじゃないですよね?」
「この方はアスクさんです。アーサー様との用事があってわざわざブランからここまで来てくださったんですよ」
「成程。あ、自己紹介が遅れましたね。自分はクランメンバーのブライトです。よろしく」
「どうも。アスクです」
軽い自己紹介を終えて別れた後、客室へと通されたアスク。
ミント茶と菓子を出され、会議が終わり次第アーサーが来るとのことで、少しの間待つ事になった。
ミント茶の香りを楽しみ菓子の美味しさに舌鼓をうっていたアスクだったが、部屋の外からの視線に気付きスキルを使って何人外に待機しているのかを調べた。
(1人か。わざわざ待機してるってことは俺に不信感を持っている奴かな)
このクランに入り一階で視線を浴びせていた何人かだろうと予想をつけ、溜息をついた後に扉の前へと一瞬で移動した。
「あれま」
どうやら驚きはしなかったようで扉の前から退くことはなく、此方をジッと見ていた。
少しの間沈黙が流れ、痺れを切らしたアスクが申し訳なさそうに尋ねる。
「あの〜、怪しいのは分かるんですけど。そんな敵を見るような視線を向けられると困るんですが...」
「いや!そういう訳じゃないんです!正式なお客さんというのは分かってるんですが、リーダーが人を招くことが珍しくてちょっと気になっていただけなんです。勘違いさせてしまって申し訳ない!」
どうやら単純に気になっていただけらしくその人物は扉を開けて室内に入り深々と頭を下げた。
「あれ?貴方はさっきの...ブライトさん」
「はい。気になってしまったとはいえ客人に向ける視線では無かったですね。すいませんでした」
「いえいえ、気にしないでください。多分まだ時間がかかるでしょうし、少し話し相手になってらくれませんか?」
「...!自分で良ければ、喜んで!」
何の為に来たのかや戦闘方法の他に好物や魔物の肉はおいしいなどのたわいのない話をして時間を過ごしているとどうやら結構な時間がたっていたようで、客室に誰かがやってくる足音が聞こえた。
「待たせて申し訳ないアスクさん...ブライト?君がなぜここに?」
「リーダー!すいません、つい話し込んでしまって...」
「いえ。彼のおかげで有意義な時間でした」
ブライトはアスクとアーサーへ頭を下げた後、直ぐに部屋を出ていってしまった。
「いやぁ会議が中々白熱してしまってね。意見が食い違うことは結構あるけど、やっぱり慣れないですね。
...あ!愚痴を溢してしまって申し訳ない。本題に移ろう。僕と手合わせをしたいとの事でしたね」
「はい!自分がもっと強くなる為にも、貴方の強さの秘密を知る為にも、是非手合わせをお願いしたいんです!」
「勿論いいですよ。しかし今日もう大分日が落ちてしまった。手合わせは明日にしましょう。ベッドはこちらで用意してあるので今日は連れの方も一緒に、ここに泊まっていって下さい」
「...!ありがとうございます!」
深々と頭を下げ、アリアと魔道具で通信を行い手合わせが明日になりクランに泊まらせてもらえる旨を説明した後、ブライトから浴場へと案内され疲れを癒した。
用意された寝間着を着て、明日へと備える為早めに眠りにつくアスクであった。
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