第11話 蒼白の雷
「我が名はタバス、魔王軍副隊長の1人だ。
襲撃者よ、貴様の名を聞かせてもらおうか」
「俺は冒険者のアスク、悪いが時間がねぇんでな。
速攻で倒させてもらうぜ!」
アスクが名乗りを終えたと同時に、タバスの顔目掛けて殴りかかった。
「そうはいかんな、俺にもメンツがある。魔星将であるあの方の部下として、簡単に負ける訳にはいかんのだ!」
「なっ!?」
タバスはその巨体に似合わない俊敏な動きでアスクの攻撃を避け、逆にアスクを地面に叩きつけた。
「ガハッ...!!」
「どうした、俺を地面に倒すのではなかったのか?
立場が逆のようだな?」
「舐めんな!!」
アスクは四つん這いの状態から瞬時にタバスの背後に周りこみ、顔の側面目掛けて蹴りを放った。
「フン!!」
しかしこれも腕で塞がれてしまった。
「貴様、中々素早いな。あと少し反応が遅れていたら大ダメージになっていたぞ」
「嫌味かよ、クソッタレ...」
(こいつ、このデカさであのスピードはちょっと反則だろ、エルミラの人造人間の倍は強いぞ。これで魔星将じゃないとかどうなってんだ、魔王軍はよ...)
心の中で悪態をつくアスク
「まだまだァ!」
それでも尚、諦めずに向かっていく。
何度も何度も、攻撃を受けられる度に反撃をくらい疲弊していくアスク。
顔から狙いを変えて胴体や足元を狙ってみたが、避けられては反撃を喰らうの繰り返し。
3分程攻防を行い、これ以上時間を使う訳にはいかないと感じたのか、力を温存している場合ではないと感じたのか
アスクは一気に勝負を決めるための賭けに出た。
「認めるよ。どうやら今のスピードとパワーじゃ、あんたには勝てねぇ」
「ならどうする?潔く諦めて殺されてくれるのか?」
「な訳ねぇだろ、見せてやるよ。今の俺の本気をな!」
アスクは拳を力いっぱいに握り、体の中から雷と魔力を一気に解放した。
「ハァァァァァァ!!!!」
「こ、この魔力量、そしてこの雷。貴様、何をする気だ...!?」
「あんたのスキル、多分体を巨大にする能力だな?体がデカいまま素早い動きができるのはそのデカさが限界なんだろ?じゃなきゃもっとデカくなって俺を踏み潰せば一気に勝負は決まっていた」
(こいつ、この短時間でおれのスキル〈
なんという観察眼、こんな奴がこの街にいたとは...)
「俺があんたに勝つには、あんた以上のスピードで動き攻撃を当て続けるしかねぇ。だからこの技に賭ける!」
「奴の体の内側から放たれた雷が、空中の魔力と共に奴の体に...」
先日のエルミラとの戦いで使った纒雷。
あの技は、雷を体全体に纒うことで一時的にアスク自身の身体能力を上げる技だ。
弱点として、長時間使いすぎると筋肉が麻痺して動けなくなるというデメリットがある。
アスクはこの技を研究中にあることに気がついた。
この技は魔力の吸収と同時に使うと、身体能力の上昇量が大幅に増える。
しかし、普通の纒雷よりも強化した纒雷の方が動けなくなるまでの時間が早いというデメリットがあった。
その為、エルミラ戦では後に救助者を運ぶことも考えて、敢えて通常の纒雷を使ったのだ。
だが今は違う。
すぐに目の前の敵を倒さなければ自分の命も、後ろで戦っている仲間達の命も無くなる。
後先を考えている時間は、無い。
「ウォォォォォォ!!!」
アスクの足元の地面にヒビが入る。
「この威圧感、こいつ...」
(こいつは直ぐに殺さなくては...
あの方の邪魔になる可能性が高い!!)
「死ねぇぇぇ!!!」
タバスの巨大な拳が、アスクへと振り下ろされる
筈だった。
「ガ、ガファ...!!」
タバスの拳が振り下ろされるよりも遥かに早く、アスクの拳がタバスの顔面に突き刺さっていた。
強力な一撃を貰い、倒れるタバス。
「貴、貴様...」
「やっと一発だな、さぁこっからが本当の戦いだ!!」
アスクの体に、青雷が纒われており、頭髪も黒から青白い色へと変化していた。
「そ、その姿はなんだ...」
「んなことはどうでもいいだろうが、髪に関しては俺もしらねぇ。まぁ体が雷に近い性質になるからそれに合わせて青くなってるんだろうぜ!!」
「グハァ...!」
言い終えると同時に倒れたタバスの顔目掛けて蹴りを入れる。
今度の動きには反応できなかったようで、タバスはまともに蹴りを受けてしまい、吹き飛ばされた。
(ま、全く反応できない。さっきの何倍も早い動きだ。俺が優勢だった筈なのに、いつの間にか形勢が逆転してしまっている...!)
「か、体が動かせん。ダメージが大きすぎたッ...!」
どうやら二撃でも相当なダメージだったようで、上半身しか起き上がることができない。
「動けないところ悪いが、トドメだ!」
アスクが体に纏った雷を拳に集めていく。
青白く輝く光は、戦場で戦う他の者たちの目を釘付けにしていた。
「あ、あれは...」
「アスクさん!」
彼を信じていたヘリアも、手を止めずにその光を見ていた。
そして、彼の勝利を確信した。
「いけぇ!!アスクさん!!」
「蒼白・雷迅拳!!」
圧倒的な速度で、渾身の一撃を放つ。
「グオァァァァァァァァァァァ!!!」
直撃したタバスは凄まじい速度で後方へと吹き飛ばされた。
「ハァ、ハァ...」
短時間しか纒雷を使ってないのにも関わらず、息が切れるアスク。
敵を倒せたから良いものの、やはりデメリットが大きいな
まぁ敵の指揮官を倒したし取り敢えず危機は去ったかな
と、アスクが感じるのも束の間。
圧倒的な魔力反応の出現に、体が反応した。
「〈
ご期待に答えることができず、も、申し訳ございませんでした。」
「タバス、到着が遅れてすまなかったな。後は私に任せて休んでいてくれ」
「ま、まさか...」
左目に眼帯を付け、黒の装束に身を包んだ銀髪の魔族がそこに立っていた。
「さてと、部下の敵討をさせてもらおうか...」
「魔、魔星将...」
危機は過ぎ去ってはいなかった...
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