第6話 エルミラの実力

「そらそらそら!」

「流石は現役Aランク冒険者だ、彼らとは実力が違うな!」


アスクが放つ連撃を受け止め、エルミラは調査員達の方に目を向ける。


「こちとらSランク目指してんだ、お前なんかに負けてられっかよ!」

「!!!」


受け止められた拳を体全体を使って脱出させて、再度攻撃の体制へと移る。

稲妻の様に素早い動きでエルミラを翻弄するアスク、だがエルミラも黙ってはいない。


「凄まじい速さだな、だが...」

「!!!」

「こいつはどうだい!?」


エルミラの腹からいきなりオーガの拳が放たれる

予測不可能なその攻撃にたちまちアスクは吹き飛ばされてしまった。


「なんで腹からオーガの拳が出てくんだよ...」

「ヌフフフフ...」

「それが...てめぇのスキルかよ!」


そうとう吹き飛ばされたアスクだが直ぐ様体制を直しエルミラを見据える。

全く未知の相手に油断していた、アスクは頭の中でそう考えるがそれは言い訳にしかならない。


(初めて戦う相手なら無理に距離を詰めては行けない、予測できない攻撃で手痛い一撃をもらうことがあるから)


アスクが師匠から教わったことの一つだ。

再度教えを頭に叩き込み、相手をよく観察する。

そうすればどんな攻撃がくるか、ある程度の予想ができる。


「さぁ、遠慮なく来たまえ!どこから攻撃が来ようとも私は君の攻撃に対応して見せるぞ!」


自信満々の様子で手を広げて待ち構えるエルミラ。

あそこまで無防備な状態だと逆に苛つくが...あくまで慎重に戦おうとするアスク。


中々攻撃を仕掛けないアスクに痺れを切らしたのか、エルミラが攻撃体制になる。


「来ないのなら、こちらから行くぞ!!」

「...来い」


エルミラの放つ拳を受け流し、奴の腹にカウンターを肘でぶち込む。


「〈雷流し〉!」

「ぐっ!!」


雷を纏った一撃がエルミラを襲う。

最初に与えた攻撃は効いていないようだったが、この一撃はどうやら有効な様だ。


「どうやら、スキルを使った攻撃ならお前に通るようだな」

「ご名答。私のスキルはスキルでの攻撃以外を受け付けない〈プレーン・バリア〉だ」


破られたからなのか自分のスキルを説明するエルミラ。

自分のスキルがバレたというのに未だに余裕の表情だ。


「...フフフフフ」

「あぁ?」

「フハハハハ!!!素晴らしい、素晴らしいぞ!!一撃の重さもそうだがそれだけではない!未だに感じる痺れからして電気を使うスキルかな!?ならば弱点は塩水ということになるのかなぁ!?君に塩水をかけた瞬間に電気が飛び散ってスキルを使えなくなったりとか!?いやぁ普通の電気とは違そうだ、スキルによるものだからもしかすると全く別物の電気になっているのかなぁ!体の中に電気を生成する器官があったりするの!?そうだとしたら君を殺した後に解剖しなきゃねぇ!その器官を用いて新しいキメラを作るのも良さそうだ!他にも君を何かしらの生物と交配させて産まれた生物にその器官が遺伝しているのかを確かめる実験というのも良さそうだ!しかしまだ器官があると決まったわけじゃない。君にしか作り出せない電気なのだとしたらそれを量産できるように君のクローンを作るとかも楽しそうだなぁ!!実験が一通り終わったらオーガ達みたいに私が取り込むというのも良さそうだ!必ず将来の為になるぞ!」


ドン引きです。

アスクは突然様子の変わったエルミラにドン引きしてていた。

いきなり興奮したかと思えばとんでもない妄想を膨らませている、それを本人がいる前で口に出すのだから更にタチが悪い。


さっさと殺そう。


鳥肌が立ちっぱなしのアスクはそんな感想しか出てこなかった。

雷を纏った拳をエルミラに向かって振り下ろす。


「〈雷降かみなりおろし〉!」


アスクの攻撃が当たる瞬間、エルミラは先程とは比べ物にならない速度で動きアスクの顔面を殴り飛ばした。


アスクは勿論、調査員達を救出中のユーリでさえその動きに驚いた。

先程の変態的な様子から一変、獲物を狙う獣の如き形相となったエルミラがアスクへと襲いかかる。


「君が悪いんだよ!そんなに魅力的だから!!最初は君を殺して勇者を持ち帰るつもりだったのに!!今は君を連れて帰りたくなっちゃったよぉ!!」

「股間膨らませながらごちゃごちゃ気色悪いこと言ってんじゃねぇよ!このクソ変態野郎が!!」


もっと変態度がましたエルミラだが、アスクもどうやら彼のことを言えない様だ。

何故ならアスクも、手応えのない雑魚と違った圧倒的な強敵と戦えることに対して自身が気づかない内に、笑っていたのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る