第2話 勇者様との顔合わせ
ハクアから護衛の依頼を受けた日から3日後...
アスクは護衛対象である勇者との顔合わせのために街から出る門にいた。
「今回の依頼ってやっぱ王様直々なんかねぇ」
「恐らくそうだろうな、この国に顕現した勇者を強くしておけば後々他国や他の大陸との戦争になった時に有利になるだろうからな」
「それまでに鍛えておきたいってわけね。
まぁ国王様の不安も分からんでもない。最近は何処の大陸も動きが怪しいしなぁ...」
アスク達が戦争だの何だのと物騒な話をしているうちにどうやら勇者が到着したらしい。
「この度は私の護衛を受けていただき感謝します!ハクア団長殿の推薦と聞き胸が高鳴っております!!」
「...うん、よろしくね?」
声、デカくね?
アスクもアリアもそう思っただろう。
仮にこの音量でいつも喋っているならとんでもない近所迷惑になる。
その声の発信源である勇者は...
身長はアスクの目の前くらいで髪は真っ赤な色、身軽で動きやすくそれでいて優雅さを思わせる服装、そして炎の如く煌めく目と手の甲にある勇者の紋様。
全体的に見て元気で活発な美少年といった感じだった。
「申し遅れました!私の名はユーリ・ベル・
ハイドラ!由緒正しきハイドラ家の産まれです!炎の勇者としても貴族としても精一杯自分の使命を全うする所存です!!」
「自己紹介ありがとう、悪いけどもう少し音量小さめで喋ってくれると助かるんだが...」
「あ、申し訳ありません...」
音量の大きさを指摘され縮こまるユーリ。
ハイドラ家といえば代々王家に仕える貴族だ。
この街〈ベルクラン〉はアルバの中央に位置する街であり作られたのも3000年以上も前という。
ハイドラ家は建国当時から王家に仕えており、建国から20年後にこの街を任されたと聞く...
そんな名家から勇者様が出てきたとなったら国王様も大喜びだったんだろうなぁ...
そんなことを内心思いながらアスク達もユーリに対して自己紹介をしていく。
「俺はアスク・レギオン、宜しく勇者様。
そんでもってこっちが俺の相棒の...」
「アリア・グランツだ。宜しく」
二人の自己紹介が済んだと思いきやユーリが先ほどよりも目を輝かせてアスクを見ていた。
「アスクさん、もしや貴方は...」
「...ん?」
「あの剣聖シン・レギオンのご子息なのでは!!??」
ユーリがキラキラと目を輝かせながらアスクを見ているのに対しアスクは冷めた目で明後日の方向を見ていた。
「その通りなんだが、親父の話はあまりしないでくれ。胸糞悪くなっちまうからさ」
「...っ、すいません。触れられたくない話題に...」
「いや、いいんだ。個人的な問題だからな、そんなことよりどこまで修練しに行くんだ?」
アスクは自分の家族関係の話を置いて依頼についての話を進めるようユーリに促す。
「あ、そうですね。今回はこの街を出たあとに真っ直ぐに北上してベルロアとカルディナとの国境の半分の距離に位置するダンジョンまで行く予定です。」
「あの付近のダンジョンのまで行くとなると、精々4日程度といったところだな。ダンジョンの攻略もそこまで心配することもなさそうだ」
アリアは随分と余裕そうな表情だが実際はそう簡単なことではない。
どの国にあるどの街にも、街の中央に結界を張る魔法陣が展開されている。
この結界によって魔物が近づかないようになっているのだが...
この結界は強い魔物だけをピンポイントで遠ざけることを目的としている為、逆に弱い魔物ほど街に接近してくる。
その分、強い魔物は街より遠ざけられることとなり、大陸の端である国境にいくとなると強力な魔物が蔓延る魔窟になっている可能性しかないのである。
それなのにアリアが余裕なのは彼女の実力が頭抜けているからだろう。
「そりゃお前は余裕だろうさ、何せ...」
「世界に10名しかいないSランク冒険者...
その中でも4位に位置するアリアさんがいればもう怖いものなしですね!」
通称〈
圧倒的な実力を誇るSランク冒険者達は総じて人外と称されるが、その戦いぶりを見た他の冒険者達は口々にこういう
『5位以上はもはや災害だ』と
「先に言っておくが、私が戦うことは無いに等しいと思え。あっても雑魚掃除だ」
「分かっていますとも!それでは私の修練になりませんからね!」
どうやらユーリはアリアに頼り切りになるつもりは全くないらしい。
「さぁ!行きましょう!!楽しい冒険の始まりです!!」
「はぁ、まさかこんなにうるさい奴と一緒になるとはな...」
「まぁ、いいじゃねぇか。弟かなんかだと思えば可愛いもんさ。しっかり俺たちが守ってやろうな、相棒」
ユーリが勇ましく進み、アスクとアリアもそれに続く。
これから先長い付き合いになる三人なのだが、それまだ先のお話...
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