第3話 ヒールってこんな効果やんな
脳細胞が減少・壊死することで起こる認知症は、その種類によって原因は異なるが、アルツハイマーは、脳にアミロイドβという特殊なたんぱく質がたまり、脳細胞が壊れて死んでしまい減っていくことで起こる。 このアミロイドβは加齢により増えやすくなるため、高齢者が発症することが多い。
まあつまり、脳細胞が怪我をしている状態とも言える。
ちなみに認知症の半分くらいがアルツハイマー型認知症である。結構高確率。パチンコ海物語なら魚群並みの確率。マリンちゃーん!
「すいません、朝食が終わったら息子に連絡が取りたいのですが―― 」
田中さんが遠慮がちに話しかけてきた。いつもの高圧的な感じではなく、少しビビる。
「ど、どうしたんですか? お財布でしたら、私が一緒に探しましょうか? 」
「財布?ははは。財布は息子に管理して貰ってるんですよ。モウロクしちゃったからね。でも、次の確定申告についてはちょっと息子に言っとかなきゃならないことを思い出しちゃって―――」
「えっ、『息子に管理』?『確定申告』? 」
「息子は大雑把なところがあるから、確定申告とか税務関係みたいな細かいヤツが苦手なんでねえ。」
「――はァ。じゃあ、後ホド、電話ヲオ貸シシマス……。」
思わずカタコトの日本語になる俺に、さらに竹下さんが追い討ちをかける。
「やることなくて暇だから、たまには外泊とかできるのかしら。皆さんと生活するのは楽しいけれど、たまにはひとりの時間もあったらいいと思いません? 娘のところには迷惑掛けたくないから、温泉にでもひとりで1泊、楽しんできたいのよね。長らく独り暮らしだったから、一人の時間も欲しいのよねぇ。」
朝食後はいつも排便について絡んでくる福田さんはやってこないし、三木さんと大平さんはひとりでトイレへ行くし、そして骨折しているはずの鈴木さんは―――
「鈴木さん! 危ない! 歩かないでください! 」
「なんかわからんけどな、いたくないんじゃ。ほれ、ジャンプもできるぞ? ぴょーん、ぴょーん! 」
「あわわわわ! 待って、待って、ああああ………あ、あれ? 転ばない? え! めっちゃ普通に歩けてるじゃないですか! えっなんで? 痛くないんですか? 」
「全然痛くないし、もしかして骨折治ったんじゃないか? 」
「そ、そんなバカな―――」
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