第25話 決戦(1)
ローデヴェイクが止まらない。
凶悪な光球を王城に向けて叩きつけた後、彼は警備兵を捕まえて、移動手段である馬車を急ぎで用意させた。
警備兵も、周囲に大勢いる者達も、明らかにローデヴェイクに怯えている。
彼に声を掛けられた警備兵は、顔を蒼白にしながら指示通りに動いていた。
直ぐさまローデヴェイクの希望通りの馬車が用意され、乗り込み、王城に向かって走らせる。
人通りの多い王都の目抜き通りを疾走する馬車に、行き交う人々は大慌てで道の端に寄った。
「(ローデヴェイク、無関係な一般の人達に迷惑をかけ過ぎなんじゃないかな……)」
「そこを気にする必要はないと思うよ? ―――それより、ミィちゃん、王城に着いたらボキボキバキバキしようね?」
そんなローデヴェイクの物騒でしかない言葉に、ミロスラヴァは素直に頷いた。
ヘルトルーデによって可愛く結われた彼女の淡い桃色の髪が、その動きに合わせて揺れる。
「うん、パパ! ミィちゃん、いっぱい頑張る!」
「……僕もっ」
ラディスラフが決意を示す為にか、両拳を握った。
「(えっと、私も頑張る?)」
「うんうん、皆で頑張ろうね。ヴァルは役に立たなそうだけれど」
「ほざけ」
危険な速さで走る馬車の中で、そのような会話を五人で交わす。
車窓から見える景色の流れが速すぎて、ヘルトルーデは居た堪れなさに猫の髭をピクリと震わせた。
ローデヴェイクがそれに気づき、クリーム色の毛並みを撫でる。
「ヘルトルーデが気に病む必要は無いよ? これからの行為に対する責任は私のものだからね」
「(……ローデヴェイク、でも)」
「ヘルトルーデは解呪の事だけを考えて。頑張ろう。呪いを解くよ」
「(うん。それはもう絶対に。頑張ろうね)」
「解呪が楽しみで仕方ないよ。これでやっと、互いに人として触れ合えるのだから。ようやくだよ。長かったね」
「(うん)」
「ヘルトルーデ、もう少し考えた方がよいぞ? こやつの言っている事は、手を握って解呪の喜びを分かち合う事だけでは勿論ないからな?」
「(え?)」
「ヴァル、余計な事は言わなくていいよ」
「知らず毒牙にかかっていく哀れな猫を見ていられなくてな」
「魔王であった者の言葉とは思えないね」
「我は穏健派だったのでな」
「よく言うよ」
「(あのね、此処まできて子供みたいな喧嘩は止めてね。城門が見えてきたみたいよ?)」
「そのようだね。―――さて、決戦といこうか」
そう言ってローデヴェイクが不敵な笑みを見せ、身体強化や体力増強などのいつもの付与を展開する。
ヘルトルーデとミロスラヴァは素直に掛かったが、ヴァルデマルとラディスラフは相性の問題か弾かれて、ローデヴェイクが片眉を上げ、ヴァルデマルが肩を竦めた。
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