関という男

随分と昔の思い出が長くなったことにプッチンは驚いた。

さあ気を取り直さなくては!


ハッチが重々しく開いていく‥


出迎えるのはロシヤのメディアのレンズ‥もちろんプッチンの息がかかっている。

そして、プッチンの専用車までの数十メートルは完全武装の兵士が詰めている。


さあ引きつった笑顔を見せてくれ!ハッチの先空間に一同の視線が集中する


が、その空間はいつまでも何もない空間でしかない。


腰でも抜かしたのかと

とプッチンは破顔しそうになるのを抑える。


ウクライヤで成果が上がらないがこれは、幸先の良いスタートになりそうだ

静かに皮算用を始めた。

独裁を築いたと言えど、失策は政治家にとっての命取りである。

その理解があるからこそ、プッチンはここまで上り詰めたのである。


プッチンは踵を返して専用車に入る。

「大統領よろしいですか?」SPが声を発する。

「なんだ!」彼は勝利の余韻を邪魔され声が荒げる。

「クレムリンから連絡がありました。それが、大統領執務室に関と名乗る男がいると」


「!!」プッチンは言葉が継ぐことできない。

「その男が自分は日本国大統領兼首相であり、プッチン大統領に招かれたと言っていると」


「一体どうゆうことだ!すぐにクレムリンを呼び出せ」


「それが、今も繋がっています。その関と繋がっております。」SPは半ば押し付けるように受話器をプッチンに渡した。


プッチンは恐る恐る受話器を押し当てる。


「プッチンだ」

「こんにちは、大統領どうやら行き違いになったようだ」流暢なロシヤ語であるが、間違いなく外国人の発音である。


「日本の関大統領で間違い無いのか」プッチンは信じられない。

「当たり前だ。」平然とした声であった

「どうして?クレムリンにいる?」

「どうして?君がクレムリンの執務室で会おうと招待したのだろう」

確かに日本大統領への招待状はロシア側から要請したものであった。

そこには、プッチンのサインとともに、クレムリンで会おうと記載しておいたのであった。まさかこれを実行したとでも言うのか?


大統領府クレムリンのセキュリティはこの国で最も高い一つである。そのロシヤ大統領府に潜入だと!


「一体どうやって...まさか死の落下ダイブを」

プッチンの脳裏に一つの可能性が浮かぶ。

大統領専用機からパラシュート降下で潜入することでしか考えれない。

クレムリンに地上から潜入することは不可能である。


しかし、その可能性も自殺に等しい行為である。

パラシュートではモシクワ防空システムに引っかかる。近年のドローン攻撃もあり高度で言えば70mまではレーダー圏内である。


つまり、70m以下でパラシュート開いたと言うこと

それは、まさに自殺である。

プッチンは受話器の向こうの男の狂気を圧倒されかけていた。額には汗が浮かび上がっている。


しかし、関の声は狂気とは正反対の冷静で鷹揚とした響きであった。


「そこで、お待ちください。すぐに行きますので」プッチンは急ぎクレムリンに向かった。




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戦国大統領 @kuwagatasann

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