第7話・仲良くできなかった学年の秘密
「大樹さんと賢さんの学年って、仲良くなかったの?」
「まぁな」
苦笑しながら答えてくれたのは、賢さんだった。大樹さんはまだ俯いたまま。もしかすると、聞いてほしくないのかもしれない。
「仲良くないっていうか、四家が互いにライバル視し過ぎてるんだよなぁ。俺の学年にも居るけどさ、大樹たちの年代には、四家の跡継ぎが集まってるから、特に仲が悪いよな。分家は、別にそうでもないみたいだけど」
四家? 分家? 跡継ぎ? 何の事だろう?
それ、何? と聞くと、ちい兄は少し考え込んだ後、口を開いた。
「どうせそのうち知る事になるから、ざっくり教えとくけどよ、さっき、お前のクラスに方角がついているクラスメイトが多いって言ってただろ? それと関係してるんだけどな、この学校には、東西南北のどれかの方角がつく金持ちの子供が通っててさ、その金持ちの家の跡継ぎが、全員同じ学年なんだ。親世代が仲悪くてさ、その子供たちは互いにライバル視しあってたんだ」
「なるほど、だからその学年は、仲良くできなかったんだ」
「そういう事だな。まぁ、そういうの面倒だって言って、我関せずを貫いていた奴もいるんだけど」
賢さんがちらりと隣に座って俯いたままの大樹さんを見た。
大樹さんはため息をつくと、思い切ったように顔を上げる。
「小花、俺のフルネームは、東宮司大樹、という」
「東宮司……わぁ、大樹さんも、豪勢な名前だね!」
「ありがとう……。でも、それを言うなら、小花もだな」
「確かに、そうかも……て、え?」
大樹さんが、東宮司で東、私やちい兄が、西園寺で西……。
「小花、東西南北のそれぞれの金持ち……の家が本家で、四家と呼ばれている。A組の生徒で東西南北のどれかが姓に付いているのは、それ以外の分家だと思っていい。で、四家は、東宮司、西園寺、南京極、北御門だ」
「じゃあ、うちって……」
「西園寺は、四家の一つだ」
「四家……」
「そして、分家は四家の苗字をそのまま名乗るのではなく、その方角を取り入れて別の苗字を名乗っているんだ。分家は本家の家臣って事になるからな。小花ちゃん、俺のフルネームは、裏東賢っていうんだ」
大樹さんの説明の続きをしてくれたのは、賢さんだった。
「クラスメイトに、南京極の茉莉花ちゃんが居るんだろ? あと、南条家は南京極の分家の一つだから、厚が茉莉花ちゃんを姫って呼ぶのは、普通の事なんだよ。その考え方で、自分と渚ちゃんを考えてみたら、渚ちゃんが小花ちゃんを様付けで呼ぶ理由とかわかるだろ?」
「わかるような、わからないような……」
情報が多過ぎて、まだ頭がついていかない。
四家とか本家とか、東西南北のどれかが苗字についているクラスメイトはどこかの分家とか……一体何なの?
「ごめん、まだよくわからないんだけど、じゃあ、そういう人たちがみんなA組になっているのって、何か目的があっての事なの?」
「それは、だな……。これから授業で教えてくれるはずだ。でも、目的の一つとして、理事長や俺が入学式で言った事がある……」
ちい兄はそう言うと、苦笑した。
理事長やちい兄が言った事。
「仲良く、楽しく……」
「そう……」
いろいろと脱線したけど、スタート地点に戻ってきた。
でも、おかしな事がある。
さっきちい兄は、大樹さんたちの学年に、四家の跡継ぎが集まっているって言った。
という事は、大樹さんたちの学年に、西園寺家の人間が居るという事だ。
それはつまり……。
「ねぇ、ちい兄、もしかして、私にちい兄の他に、お兄ちゃんかお姉ちゃんが居るの?」
そう聞いた私に、ちい兄は深く頷いた。
「あんまりお勧めできる奴らじゃないけどな」
え? 奴ら? 複数形の表現?
「俺とお前には、兄貴と姉貴、どっちも居る。あいつら、双子なんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます