第8話・双子の兄姉


「双子?」


「そう。優介と麗華っていう、兄と姉。その二人が、大樹たちと同じ学年に居る。俺はあいつらの事、二人まとめてユーレイって呼んでる」


「ユーレイって……」


「優介と麗華だから、二人まとめてユーレイだろ?」


 確かにそうかもしれないけれど、自分のお兄ちゃんとお姉ちゃんをまとめてユーレイとかって、ひどくない?


「ちい兄、もしかして、そのお兄ちゃんとお姉ちゃんとは、仲が悪いの?」


 そう尋ねると、ちい兄は何の躊躇いもなく、大きく頷いた。


「兄弟って言っても、奴ら、俺の事なんて、ほとんど無視してやがるからな。俺の兄弟は、お前だけだって思ってる。だいたい、あの二人がしっかりしてたら、俺があの家に連れて行かれる事もなかったかもしれないんだよ。そう考えたら、本当にいろいろとムカつく」


「え? どういう事?」


 高校入学と同時に、いろんな事を聞いて、頭がパンクしそうだ。


「小花、さっき千隼が、四家は互いにライバル視し過ぎてるって言ってただろ? 覚えているか?」


 大樹さんの問いに、私は覚えていると頷いた。


「互いをライバル視するのは、俺たちの親世代がある事で揉めて、仲が悪くなったせいだ。まぁ、うちの親はそれほどでもなかったが、西園寺、南京極、北御門の三家は仲が悪くてな。同学年に子供が生まれた事もあり、絶対に一番を取れ、というプレッシャーを子供に与え続けていたんだ。うちは、そうでもなかったんだけどな」


 賢さんが言っていた、我関せずを貫いていた、というのを思い出す。

 何故かはわからないけれど、大樹さんの東宮司家だけは、子供にプレッシャーを与えるような事をしなかった、という事らしい。

 家によっていろいろなんだなぁ。


「小花は、あいつらに会ってみたいか?」


 大樹さんに聞かれ、私は考える。

 少し心配そうな表情で、ちい兄やおじいちゃんたちが私を見つめていた。

 考えた結果、


「よくわからない」


 というのが、私の気持ちだった。

 ちい兄以外の兄姉が居るって言われても、なんか信じられないし、私はお父さんにだってまともに会った事がないのだ。

 例え血が繋がっていたとしても、お父さんや顔も知らない双子の兄姉を、家族だとは全く思えなかった。


「別に、会えなくてもいいかな」


 会っても、どんな反応をすればいいのかわからないし。

 私がそう言うと、大樹さんは、そうか、とだけ答えた。


「でも、私から会いに行った方がいいのかな?」


 ちらりとちい兄を見ると、


「会う必要なんてねぇよ。気にするな」


 と言う。


「あいつらには今そんな余裕はないし、会ったら、お前、絶対にがっかりするからさ」


「え?」


 ちい兄がぽつりと呟くように言って、私はそれがどういう意味なのかちょっと気になったけれど、それ以上聞く事ができなかった。


「わぁっ」


 賢さんの膝でおにぎりを食べていた昌央が、ジュースを取ろうとしてひっくり返してしまったからだ。


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