第6話・兄との再会
「ちい兄! 本当にちい兄なの?」
「おうよ!小花、久しぶりだな」
突然『定食屋まなか』に現れた、ちい兄だという男の人には、確かにちい兄の面影があった。
ちょうどお客さんが居なくなって、片付けをしていた私は、テーブルを拭く手を止めた。
「あぁ、その垂れ目、見覚えあるかも!」
私がそう言うと、ちい兄は垂れ目をさらに強調させて笑った。
垂れ目垂れ目と繰り返すと、ニヤリと笑う。
「こらぁ、うるせぇぞ、小花!」
「わぁ、本当にちい兄だぁ!」
腕を広げたちい兄に、私は飛び込んでいく。
小学校の頃に別れた子供は成長して、今は高校生だ。
私よりもずいぶん大きな体は、飛び込んだ私の体を簡単に受け止めてくれた。
「ちい兄、本当に久しぶり。大きくなっちゃって」
ちい兄は私よりも二十センチくらい、背が高くなっている。
「小花は、相変わらずチビだなぁ。お前、今度高校生になるってのに、こんなに小っちゃくていいと思ってんのかよ。小学生のままかよ。今、身長何センチなんだよ」
「一五三センチだよ。身長、もう少し欲しかったけど、伸びなかったんだぁ」
そう、私の身長は伸びなかった。小学校を卒業した時の身長と同じなのだ。服を買う時に困るから、あと五センチは欲しかったんだけどね。
おじいちゃんには、子供用の服が着られるんじゃないかって、よくからかわれている。
「俺が、一七三センチだから、ちょうど二十センチ違うな」
「へぇ、ちい兄、一七三センチもあるんだ~。大きくなったねぇ」
「おう! と言いたいところだが、本当は、一八〇センチは欲しかったんだよなぁ」
一八〇センチと聞いて、私が思い出したのは、もちろん大樹さんと賢さんだった。なるほど、確かにあの二人よりも今のちい兄は小さかった。
「千隼が帰ってきたって? 本当か?」
「まぁ、千隼、大きくなって」
「本当に千隼だ、カッコよくなったねぇ」
店の奥にある厨房から、おじいちゃんとおばあちゃん、そして叔父さんが出てきた。
「うん、そうなの! ちい兄、突然帰ってきてえ? ちい兄?」
私は厨房から出てきたおじいちゃんたちを見て、ちい兄に視線を戻して、驚いた。だって、ちい兄が、ぼろっぼろ涙を零して泣いているんだもん。
「じ、じいちゃん、ばあちゃんっ……お、叔父さんっ……俺っ……」
ちい兄は零れた涙を隠そうとしたのだろう、腕で顔を覆ったが、泣いているのは隠せなかった。
おばあちゃんがちい兄に近づいて、
「千隼、おかえり」
と優しく言って、ちい兄の体を抱きしめる。ちい兄はおばあちゃんの体をぎゅっと抱きしめて、泣きながら、だけどとても嬉しそうに笑った。
「ただいま、ばあちゃん」
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