第5話・受験勉強が終わったら
「そうかぁ、小花ちゃんは、西園寺小花、かぁ~。千隼の妹なのか~。いやぁ、本当に驚いたぜ~」
驚いた驚いたと繰り返す賢さんと、それに頷き続ける大樹さん。
二人は私のお兄ちゃん――西園寺千隼の事を知っていた。
「あの……千隼お兄ちゃん……ちい兄は、元気にしていますか?」
そう尋ねると、あぁ、と大樹さんは優しい表情で頷いてくれた。
「おう、元気にしてるぜ。聞いて驚け、小花ちゃん。俺と千隼はな、すごく仲がいいんだ」
笑顔で言った賢さんに対し、大樹さんは少し複雑そうな表情をする。どうしたのかと尋ねると、笑顔のまま賢さんが教えてくれた。
「大丈夫、大ちゃんは、千隼と仲が悪いわけじゃねぇよ。ただ、大ちゃんはちょっと複雑な立場でな」
「複雑な立場?」
一体どういう事なのだろう?
首を傾げて、教えてほしいなぁ~と思いながら賢さんを見つめていると、
「それは、周央学園に小花が入学すれば、わかる事だ」
と、大樹さんが話を終わらせてしまった。どうやら、大樹さんはこの事について、今はまだ話したくないみたいだった。
「受験が終わって、小花が周央学園に受かりさえすれば、全部わかる事だし、みんな一緒に居られる。それは……俺は、すごく楽しいと思う。楽しみだ」
そう言った大樹さんに、私は頷いた。確かに私が周央学園に受かりさえすれば、わかる事なのだろう。
「そうだな。なぁ、小花ちゃん。千隼もさ、あいつ、今、すっげぇ必死に頑張ってるから、小花ちゃんも頑張ろうぜ」
「そうなの? ちい兄、頑張ってるの?」
「おうよ!」
ちい兄が何を頑張っているのかはまでは教えてもらえなかったけれど、賢さんの言う通り、私は自分も頑張ろうって思った。
「大樹さん、賢さん、私、受験勉強、がんばります。受験まで、よろしくお願いします」
改めてお願いすると、大樹さんと賢さんは胸を叩いて頷いてくれた。
それから、あっという間に月日は流れて。
私は大樹さんと賢さんのおかげもあり、無事に周央学園に合格する事ができた。
そして――。
「小花―! 久しぶりだな、元気してたか? 俺の事、覚えてるか? やっとお前に会いに来れたぜ!」
中学を卒業し、周央学園への入学準備に追われていた春の日、突然ちい兄が私に会いに来てくれたのだ。
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