第3話 幼馴染はヤバい(迫真)

「宗太郎〜!一緒に帰るよー!」


 放課後になると、美鳥が声をかけに来た。

 なんでもない笑顔のはずなのに……どこか有無を言わせない感じがした。


「あ、お、おう……わかった」


「じゃ、行こっか!」


「うわ、ちょ引っ張るなって!」

 

 俺の腕を引っ張って強引に連れ出そうとする。 

 というか連れ出された。

 なんかもうこいつに抵抗できる気がしないんですが俺。


「あのさ、今日はどこに行くんだ……?」

 

 俺は恐る恐る聞いてみた。


「えー?内緒ー」


「えぇ……。まあいいけどさ」


 もう半分以上諦めました。

 俺は大人しく美鳥に引っ張られる。


「着いたよ!」


 見覚えのある一般的な住宅。

 どこにでもありそうな一般住宅。

 そこは……。




「俺の家じゃねえか!」


「えへへ、そうだよ〜」


 美鳥は俺の家に上がり込むとリビングに入っていく。

 何で我が物顔で俺の家に上がるんですかね?


「ただいま……」


「おっ邪魔しまーすっ!」


「おかえり。あら、美鳥ちゃんじゃない、久しぶりね」


「はい、お久しぶりです!」


 迎えたのは俺の母親の紗月さんだ。

 俺は親のことを下の名前で呼んでる。

 というか呼ばされてる。

 なんかそっちのほうが親しみやすいだろうと、親父がそう決めた。

 まあ、良い親で助かってる。


「美鳥ちゃんは相変わらず可愛い顔してるのねぇ。ウチの宗太郎はこんなにだらしなかったかしら?」


 おい紗月さんよ、それはどういう意味かな?


「あはは、おばさん、宗太郎は元々だらしない顔してますよ〜」


「お前ら、俺のことそんなにディスって楽しいか!?」


 あぁ……泣きたくなってきた。

 しかし、美鳥は気にせずに話を続ける。


「ねー、宗太郎、部屋に上げてよー」


「部屋に上げるとろくなことになる気がしないから嫌だ」


「いいじゃない、宗太郎。昔はよく上げてたじゃない」


 確かにそうだけど……今は違うだろ。

 年齢を考えてくれ、紗月さん。


「……じゃ、じゃあお茶持ってくから、先行っといてくれ」


「やったー!ありがと、宗太郎♪」


 そう言って美鳥は階段を上がっていった。


「はあ……。紗月さん、茶菓子とかある?」


「確か戸棚に羊羹があったと思うけど」


「あんがと」


 俺はお盆に急須と湯呑み、そして皿に盛られた羊羹を持って自室に入る。

 ……あれ、今更だけど、これって完全に二人っきりになるパターンだよな?


「……よし、逃げよう」


 このままでは確実にヤバい。

 本能的にそう思った。

 だが、その考えを見透かすようにドアの向こうから声が聞こえた。


『……宗太郎? 早く……入ってきてよ」


 うん、気づかれてた!

 いやまあ、もし仮に気づかれてなかったとしてもどこに逃げるんですかっていうお話なんですけどね!


「……」


 結局、俺は観念して部屋に入った。


「ふふっ、いらっしゃーい♪」


「俺の部屋なんだよなぁ……。で? 何の用だ?」


「んー? 特にないよぉ〜。強いて言うなら匂いを嗅ぎに来ただけ」


 はいキモチワルイ。

 なんですかこの子、変態極まってませんか?


「……ねえ、今ボクのこと気持ち悪いとか思ってなかった?」


「……」

 

 モウヤダコワスギィ!


「はい」


「正直でよろしい」


 ……やっぱりバレるんだよな。

 

 昔から何故かこいつは俺の考えがわかる。


 昔は別に気にしなかったけど、今はちょっと……プライバシーとか気にする時期だしなぁ……。


「で、本当は何しに来たんだ?」

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