第2話 幼馴染はマーキングをする
「あ、おっはよ、宗太郎!」
俺が次の朝、登校すると、先に学校へ来ていた美鳥が元気に挨拶してきた。
「おう、おはよう」
昨日の事なんて無かったかのように接してくる。
……やっぱり夢だったんじゃないか?
うん、そうだよな、きっと夢だ!
「......夢なんかじゃ、ないよ?」
「!?」
いつの間にか、近くまで来た美鳥がそう耳元で呟いた。
顔は笑ってる。
笑っているが、美鳥の目はあのときと同じ、真っ黒な目だった。
「……っ!」
俺は思わず一歩後ずさってしまった。
しかし、美鳥はその空いた隙間を一瞬で詰めてくる。
「ねえ……なんで逃げるのかなぁ?」
また、あの声音で語りかけて来る。
更に後ずさるが、今度は背中に壁が当たった。
これ以上は下がれない。
「別に、逃げた訳じゃ……」
「……アハ、嘘つく悪いコにはお仕置きしないとね……」
美鳥は片手で壁に手を付いて、もう片方の手で頬に触れてきた。
そして、顔を近づけてキスでもするような体勢になったあと。
「んっ」
「!?」
首筋を噛まれた。
あまり痛くない。
歯形が付くくらいの強さでは無いが、強く吸われている感覚がある。
「……よし、これでいいよね」
最後にもう一度、ちゅっと音を鳴らしてから離れた。
「な、なんだよこれ?」
「……マーキング♪」
そう言ってニコッと笑った美鳥の顔は、いつも通りの無邪気で可愛らしい笑顔に戻ってた。
「あ、そろそろ先生が来る時間だよ。席戻らなきゃ」
「……お、おい」
「ん?なぁに?」
「い、今の……何なんだよ……?」
「……宗太郎がボクのこと好きって言ってくれれば教えようかな」
そう言い残して自分の席へと戻って行った。
俺はその場に立ち尽くしたまま動けなかった。
「よーっす、宗太郎! どうした、そんなとこで立ち尽くして?」
この、肌をこんがりと焼いた高身長のイケメンは堺治明。
俺の友人の一人だ。
ついさっきまで野球部の朝練をしていたらしく、かなり汗を掻いている。
「……ああ、いや別になんでもない」
「ふーん、まあいいや。それより今日の課題やってるか? オレ全然終わってねーんだよ」
「……またか。ほれ、ノート貸すから写せ」
「サンキュー!」
ノートを渡すと、治明は自分の席に座って、全力で課題を移していた。
ちゃんとやってこいよ、と毎回思うがそれでも貸す俺も俺だなと心の中で苦笑した。
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