第219話:最新のエルフの配信とは

「こんエルフ―! ボクだよー!」


 ボクはいつもの様にお嬢様の家の5階の自室で配信をしていた。登録者数もいつの間にか224万人となっていた。


 最初は挨拶すらなかったボクの配信も、いまや決まった挨拶ができている。配信時間もスケジュールを公式ページに表示して、決まった時間に配信するようにしているのだ。


 一応、芸能事務所に所属したので事務所のホームページでも紹介されていて、中々の人気らしい。


 配信スタート時はツイッターでも告知している。


 リスナーたちの呼び名、ファンネームも決まっている。


 他のVtuberの人たちの真似をしてできることはやってきた。ラジオの要素も取り入れて、固定のコーナーなんかもある。


 当然、ゲーム配信なんかもやってる。でも、人気コーナーはフリートークだ。ボクとしては未だに解せないけど。


 リスナーさんが色々話しかけてくるので、それに答えているだけの簡単なフリートーク。でも、これが一番人気みたいだ。


『最近元気なさげ?』

『こんエルフー!』

『エルフたん声に元気がない?』

『こんエルフー!』


 最近は、リスナーさんが増えたのでメッセージはすごい勢いで流れていく。速度を落としているのだけど、それでも速い。


 そして、段々とその速い文字を読むスキルが身について来たみたいで、長文でなければ読めるようになりつつある。


「ちょっと最近、忙しくて。もう一つのお仕事のほうで大変なんだぁ」


『ほうほう、おじさんが聞いたろ』

『エルフたん元気出して!』

『いつもエルフたんから元気もろとる』

『もうひとつのお仕事って?』


「あ、ボク福岡の『朝市』ってお店でメイド喫茶やってるから。福岡に来た時は遊びに来てね♪」


『エルフたんかわいい!』

『リアルエルフたんに会えるだと⁉』

『Vtuberがリアルで(爆)』

『ワイ、エルフたんにご主人様って呼ばれたい!』


「あとねぇ、最近その『朝市』で新商品を作ったんだけど、ボクも手伝ったんだよ」


『どんなん?』

『手伝い?』

『メイドが手伝い⁉』


「肉まんなんだけど、おいしいのができてさぁ。まあまあ売れてるらしいけど、もっとたくさん売れないと大変な事になっちゃうんだ」


『エルフたんが肉まん……』

『大変なこととは!?』

『肉まんを売るエルフたん⁉』

『異世界感ゼロwww』


「配信じゃみんなにはあげられないから、せめて画像をアップするね……あ、もらったのは冷凍だから、あんまりおいしそうに見えないかも」


『チンして! チン』

『どんなん? どんなん?』

『見たい見たい!』


「しょうがないなぁ……。じゃあ、チンしてくるね。ちょっと待ってて」


 ボクは配信をそのままにして、一旦2階に降りて電子レンジで肉まんをチンしに行った。


『エルフたんのアバターがぐったりしとるwww』

『この魂が抜けたみたいなやつすこ』

『エルフたんの肉まん……下ネタですか?』


「朝市」の肉まんは、600Wの電子レンジなら1個1分くらいチンしたら食べられる。今回もらってきたのは6個入りで、まとめてチンしたから5分30秒かな。


 配信中に5分以上声が届かない所にいるのって斬新かも。ラジオなら放送事故だね。


 ***


「おまたせー! 戻ったよー!」


『アバターに魂が戻ったwww』

『画像はよ!』

『俺なんかコンビニに行く準備してるから!』

『腹減ってきた。まさかこの時間に飯テロとかwww』

『「エルフまん」気になります!』


「画像アップするねー。 ほーら、よっと!」


『おー! 肉まんだ!』

『おいしそう! 期待を良い方に裏切りやがった」

『黄色いのはカレーまん? 他は?』

『ワイ、ピザまん派』


「あち! あっためすぎたかも」


『「あたため」が言えないエルフたん(爆)』

『普通にうまそう。俺もコンビニに走るか……』

『肉まん中央にチャクラが浮かんでるヤツがあるんだが』


「みんな、肉まん食べる時の飲みものって何にしてる?」


『ステマじゃないんかい! 肉まん紹介しろやwww』

『まさかの飲み物の話!』

『肉まんには牛乳がベストマッチ』

『普通にコーヒーだが』

『ワイは何でもお茶』


「あ、ごめんごめん。肉まんのほうを紹介するよ。あれ? どうしたらいいんだ、これ? 二つに割って画像をアップしたらいい?」


『具が見たい! 具が!』

『へたくそすぎる! 2つに割ったのに大小の差がひどい!』

『不器用すぎて吹いたわwww』


「次はねぇ……。ちょっと待って。先に肉まん食べちゃうから」


『食べるんかーい!』

『黄色いやつ! カレーまんを紹介せんかwww』


「はふはふっ、あっち! あっためすぎたかも。でも、うまっ!」


『あー! エルフたんの肉まん食べたいwww』

『それをよこせ! ネット回線にねじ込んでくれwww』

『それにしてもエルフたんうまそうに食うなwww 音だけだけど』


「てゅぎゅいはねぇ、スぱイすカレーあん」


『口の中の物を飲みこんでからしゃべれやwww』

『なんてwww?』


「ごめん。次はスパイスカレーまん。ただのカレーまんじゃなくて、スパイスカレーのカレーまんね」


『ちょ、気になるんだが』

『スパイスカレーまんだと⁉』

『コンビニにないやつ出すとか卑怯なり』


「断面はこんな感じ。画像アップするね。からっ! ……でも、おいしい。あ、おいしい! おいしいのが後から来た!」


『画像アップした時には、もう食っとるやないかーい!』

『辛いのか? うまいのか? 辛うまいのか⁉』

『肉まんは分かるけど、スパイスカレーまんは気になる!!』


「辛い! でもおいしい! ごめん、ちょっとお茶取ってくるね。待ってて」


『また行くんかーい!www』

『リスナーを待たせるスタイルwww』

『つぎのまんが気になるんだが』

『エルフまんのサイト見つけたわ!「朝市」ってサイトで通販やってる』


「ごめんごめん。次はねー……野菜まん?」


『初見感! もうちょっと上手にステマしろwww』

『スパイスカレーまんほどのインパクトはないな』

『野菜って漠然としてるな』


「ボク、正直 野菜はそれほど得意じゃ……あっち! 断面こんな……あ、おいしい!」


『こらこら! 画像をはよ! 先に食うなwww』

『野菜まんって聞いたことないぞ⁉』

『あー、ワイもう我慢できん! エルフたんのステマに屈してお取り寄せるわ!』

『通販サイトのURLはよ!』


「URL? ちょっと待ってね。『朝市』の……『肉まん』の……『通販』っと。あった。URL下の説明のところに貼っとくね。あ、野菜まん好きかも。もう1個あったよな……」


『いや、次行けよwww はよwww』

『第四のまんを!』

『URLなくても自力で検索できたわwww 検索ワードを公開していく斬新なパターン』


「うーん、次はステーキまん♪ わお! お肉がゴロゴロ入ってる! 角切りになってるから食べやすい! そして……お肉……やわっかい!」


『やわらかいも言えないパターンwww』

『だから、画像! せめて画像を!www』

『ヤバい! 本格的な飯テロ!www』

『ステーキまんとは⁉』

『最近、肉くってねーなぁ……』


「やばっ! 一瞬でなくなった。もう1セットもらってたな……」


『だから、次行けよ! 次www! もう1個食うなwww』

『角切り肉が入ってて肉まんうまいの?』

『このよだれの止め方を誰か教えてくれ』


「むふぅー、次は……ビーフシチューまん? うわ! 肉まんにビーフシチューってこういうこと⁉ うわっ、うんまっ!」


『ついに、説明までなくなった! 食レポwww!』

『ビーフシチューって垂れたの⁉』

『うまそう……普通にうまそう』

『それ絶対うまいやつ!』


「最後は……うわ、あんまんだ。ボクあんこ苦手っぽいんだけど……」


『ステマを完遂しろwww』

『商品を否定するな!www』

『チャクラが浮かんでたのはあんまんだったか』


「あまっ、でも、おいしい! あま・うまだ。あまうま」


『あまいのか? うまいのか⁉』

『もっとあるだろう!』

『普通のとはどう違うのか⁉』


「わさんぼん……? ってなに? なんかベタベタした甘さがない感じ? これすきかも」


『和三盆⁉ あんまんに⁉』

『そればっかwww でもうまそう! ポチったわ』

『6種類セットが欲しい!』

『ワイ、肉まんオンリー派』


「勝負に負けたら、この肉まんなくなったりしないよね⁉ ……あ、いや。なんでもない」


 ボクの拙い食レポはあまりのひどさにネットニュースに取り上げられてしまった事をボクは翌日に知ることになる。


■お知らせ

いよいよポンコツクビが全国書店で発売されました!

本屋さんでの目撃レビューをお願いします。かなりレアかもしれません(汗)


ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ https://amzn.asia/d/bUUr3SQ


お陰様で、amazonでの評価は★5です(汗)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る