第206話:カレーまんの開発と金髪の恋とは

「やるぞーっ!」


 僕、山口は狭間さんからカレーまんの開発を依頼された。


「朝市」のキッチンスタジオを使っていいということだったので、僕の自信作のスパイスカレーを作って、具の入っていない肉まんの皮と一緒に食べてみて、その具合を確かめるところから始めたいと思っていた。


 テレビの撮影もできるという、広いキッチンスタジオに一人……。なんか、嬉しいような、少し寂しい様な……。


 普段の撮影の時みたいに、可愛い女の子が助手についてくれたら、テンションも上がるってもんだけどなぁ……。


(トントン)そこにドアがノックされた。別に誰も来る予定はなかったはず……。


「はーい」


 作業中に誰かが来ると集中が切れてしまうので早めに対処しようと思って、出ててみた。


「金髪ー。きたぞー、にゃん」


 金髪と言いながらも、自分も金髪なのは光さん! なぜここに⁉


「せんむーに言われて手伝いに来てやったぞー、にゃん」


 僕は何も言わないのに、その思考を読んだみたいに光さんが答えた。


 しかも、今日の光さんはメイド喫茶の衣装のままだ。そして、猫耳! そして、取って付けたような語尾の「にゃん」!


 狭間さん! あなたは神ですか! こんな光さんを僕の下に来させてくれるなんて!


「光さん! 入ってください! そして、手伝ってください!」


「んー、せんむーから言われたから来たけどー、正直、ウチ何したらいいのかわからないぞー、にゃん」


「ボクがカレーを作るので、光さんはそれを食べて感想を聞かせて欲しいんです!」


「……」


 光さんは、口を波々にさせて少し視線を逸らせた。


「……光さん、いつも僕のカレーだけ食べてくれませんよね? それって、僕のことが嫌い……ってことですか?」


 いつも気になっていたことを、思い切って聞いてみた。


「ちっげーよ! ……にゃん」


 メイド姿の時は、語尾の「にゃん」は絶対なんだな……。可愛すぎる。


 それよりも、僕のことを嫌っている訳じゃない……。まずは、それだけでなんだか嬉しい!


「じゃあ、何で僕のカレーだけ……?」


「……なだけ、にゃん」


「え?」


 光さんが照れくさそうに、目を泳がせながら答えてくれた。でも、なんて言った?


「辛いのが苦手……なだけ、にゃん」


「ええ⁉」


 少し恥ずかしそうに顔を赤らめる光さん。


 そんな理由⁉ 今までほとんど僕のカレーを食べてくれなかったから、てっきり嫌われているかと……。


「光さん! 僕が……僕が辛くないカレーを作りますっ!」


「え? でも、スパイシーカレー……にゃん?」


「スパイシーカレーだと言っても辛い物ばかりじゃないんです!」


「でも、スパイシーカレーと言えば、『多種類の香辛料を用いて食材に味付けするインド料理の特徴的な調理法を用いた料理のこと』、にゃん?」


「ウィキペディアから引っ張ってきたみたいな回答ありがとうございます。でも、香辛料は、辛味だけじゃなくて、香りや色み、臭みけしの総称のことなんです」


「辛くないスパイシーカレーもあるにゃん?」


 少し首を傾げて質問する光さん。その可愛さで倒れそうだ。


「あります!」


 そう答えた後、僕は光さんに思い切って告白することにした。そうなんだ。今だ! 今しかないんだ!


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