第205話:勝つための裏ワザとは
「信一郎さんは1個100円の饅頭を2割引きで売ると言った」
「余計売れやすくなるじゃないっスかー」
俺の発言に光ちゃんが椅子の背もたれにドンと背中を落とした。
「それは否めない。だけど、100円だった饅頭は80円で売られるんだ。原価は変わらない。つまり、利益から直接削られる」
「つまりどういうことっスかー? ウチにも分かるように言って欲しいっスー」
「1個売って利益10円ってことだ。1,000万個売っても利益は1億円になる」
「なーんだぁー。3億円事件が1億円になるじゃけじゃないっスかー」
「それでも、俺たちの利益は1個70円なんだから、140万個くらいで1億円に到達するんだ」
「140個なら売れるっスけど、140万個って作るだけでも大変っスよー? 誰が作るんスかー?」
「……」
「……」
光ちゃんの笑顔が固まっている。
「……まさか、『朝市』で作るんスかー?」
「そのまさかなんだ……」
「無理無理無理無理っスー。ただでさえ、日々お客さんが多くなってるのに、そんないっぱい肉まん作るとか……。いくつくらい作るんスかー……?」
光ちゃんが恐る恐る聞いた。
「毎日1万個くらい」
「だー、無理無理無理無理っスー!」
光ちゃんがバタバタし始めた。実に面白い子だ。
「今の人員ではとても対応しきれないので、パートさんやアルバイトさんを採用してほしいんだ。光ちゃんの人脈と領家くんの手腕で」
「ウチは、おばあちゃんとかが手伝ってくれないか聞いてみるっスけどぉ……。何人くらいいるんスか?」
「うーん、10人か20人か……」
「はい! 分かりました! 僕に任せてください!」
急に領家くんが出てきた。この辺りは領家くんが上手そうだ。実に頼もしい!
「領家先輩、難しいですけど、募集と採用をお願いしますね」
「は、はひっ! さやさやさやっかさまのためにっ!」
領家くん、さやかさんさえいなければ完璧なのに……。凄くイケメンなのに……。変な姿勢で敬礼しているし……。イケメンが台無しだ。
「ボクは? 何したらいいの? カレーまんの味見?」
まだ食べるか……。エルフお前ってやつは……。
「とりあえず、肉まんだけは『朝市』で売り出すから、食べに来てもらいたいのと、冷凍品を作るから通販のPRをしてほしいんだよ」
「うーん……、ボクのチャンネルで言うのは良いけど、あんまり上手じゃないよ?」
「いい! とりあえず、ゼロよりは進む! 俺たちは一個ずつやって行くしかないんだ」
「うーん……。分かったー」
俺は自分で言っていて、気付かなかったのかもしれない。いや、気付かないようにしていたのかもしれない。
今の調子で動いても、3か月間で肉まんを140万個も売れるはずがないってことに……。
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発売と同時に売り切れ表示でご迷惑おかけしています。
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すぐに追加在庫となる訳ですが、Amazonさんのほうで受け付けている数というのが決まっているそうなのです。
注文が再開されたらぜひご注文ください。
注文が多いとたくさん在庫してもらえるみたいなのです。
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