第203話:信一郎さんのアドバンテージとは
「はっはっはっはっはっ! 僕はもう売る商品を決めたぞ! どうだ、悔しいだろう! 狭間新太!」
家に帰って、いつもの2階のリビングの背の高いほうのテーブルでご飯を食べる時に信一郎さんがどや顔で言った。
「はあ……」
つい先日まで、ブライテスト20人を連れてクーデターを起こしたって話だったから、密かに
それなのに、毎日家に帰って来るし、毎日一緒に食事をとるし、なんなんだこの人……。
ただ、俺も陰から狙撃されるくらいなら、多少居心地の悪い食卓を囲む方が安心だ。
東ヶ崎さんと西ノ宮さんが食事もせず、信一郎さんの後ろに控えているのはちょっと嫌だけど……。
そして、それを元に戻すには俺が勝って、信一郎さんに認めてもらう必要がある。
「ほんの数日でもう売る商品も決まったし、販売体制が整ったぞ!」
信一郎さんが重要そうなことを堂々と言った。勝負相手に進捗を言ってしまっていいのだろうか……。
東ヶ崎さんが色々情報をリークしてくれていたので全部知っているけど、知らないとしてもここである程度言っちゃうスタイルなのか……。
それにしても、まさか本当に既に人気の商品を丸パクリするスタイルなのか⁉
しかも、その生産に本家の生産ラインを使ったり、本家の生産ルートを使ったり……。もし、それが実現できるなら既に人気になっている商品と勝負することになる。
もっと言うと、相手はギネスに載ってるほどの売上だ。
それに勝てるのか……。
「もう負けを認めたらどうだ?」
信一郎さんは薄ら笑いを浮かべて訊いてきた。
負けを認めるということは、東ヶ崎さんに続いて、さやかさんまで取られてしまうということ。それだけはできなかった。
「俺は……、俺たちは勝ちます!」
「狭間さん……」
さやかさんが不安そうに言った。そりゃあそうだ。世界企業と戦うようなもの。本当に勝てるのか、めどなどは全く立っていないのが現状だ。
「ふっ、興が冷めた。僕は行くぞ! 西ノ宮! 東ヶ崎! 一緒に来い!」
「「はい、かしこまりました」」
信一郎さんは、西ノ宮さんと東ヶ崎さんを連れて行ってしまった。
リビングに取り残される俺とさやかさん。
「やっぱり、東ヶ崎さんがいないとどこか寂しいですね」
「……はい」
俺たちは、東ヶ崎さんと西ノ宮さんが作ってくれた食事をさやかさんと二人で食べることにした。
「それにしても、信一郎さんはパクリ商品で来るつもりでしょうかね?」
「お兄ちゃんはむちゃくちゃですから……」
「3か月で1000万個売るって言ってましたね。それだと売り上げは……」
「10億円になりますね!」
さやかさんは、相変わらず計算が早い!
「それだけ聞いたらあり得ないと思うけど、既にそうやって売っている企業の商品を生産ラインと販路を使うとなると実現できてしまいますからね……」
「勝負は売上勝負じゃなくて、経営がメインなので、利益勝負です。俺たちは勝てる価格設定と利益率を考えないといけませんね」
「そうですね……」
その日の食事は、東ヶ崎さんと西ノ宮さんが作ってくれたのだけど、あまり味わえる心理状態じゃなかったのだった……。
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amazon様のサイトを見ると、早速在庫切れの表示が……。そんなに売れているという話は聞いていないのですが……(汗)
大人の事情で該当部分のWEB版が公開終了となりました。ご了承ください。
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