第201話:最高の肉まんの中身とは

「さやかさん、この肉まんはご存じの通り最高の材料を準備して、『朝市』のみんなで開発してきたものです。これ以上があるって言うんですか?」


 俺は、さやかさんを信じたいと思う気持ちもあるし、さやかさんを含めた「朝市」のみんなの全力も信じたかった。


「はは……。でも、やってみましょう。考えてみましょうか」


 さやかさんの言うことを信じた。正直、この瞬間の俺はこれ以上の肉まんはできないと思っているが、さやかさんを信じているのも本当だ。矛盾しているけど、やってみればいいだけだ。


「そうですね」


 さやかさんはさらりとした笑顔を見せた。


 ***


 俺は、ホワイトボードに材料を書きだしていく。


「まず、豚肉ですが、近所の養豚場の豚肉を『朝市』では販売しています。餌に『朝市』の残り野菜を使っていたり、良い餌を使っています。豚は本来、きれい好きでよく動く動物です。この豚は広い場所で健康的に育てられていて十分育ってから食肉になります」


 ここで使われている豚肉の豚についての説明を書いて、他のメンバーにも伝えていく。


「地元でこれからブランド豚として売り出して行こうと考えているほどでしたね。無名の今だから、この値段で手に入るので、コスパもいいんでした」


「その通りです」


 さやかさんも説明に補足を入れてくれた。


「次に竹の子ですが、近所の山の放置された竹林を整備して、そこから取れた竹の子です。これも、これから売り出して行こうと思って、『朝市』では水煮の状態で販売しています」


「これも歯ごたえが良くて、一般的に流通しているものより質が高いと思います」


「俺もそう思います」


 俺たちの説明に他のみんなも静かに聞いてくれている。まぁ、肉まんを食べながらだけど。


「玉ねぎは、『佐々木さんの玉ねぎ』です。土から作り直して大きくて甘い玉ねぎで、これは『朝市』でも人気商品の一つです」


 今日は、佐々木さんはおじいちゃんだけ参加してくれている。右手を上げて答えてくれた。


「しいたけは、原木じゃなくて伐採などで出たおがくずなどに栄養を混ぜたブロックに菌を植え付け、プレハブと呼ばれる巨大冷蔵庫で育成しているものです。安定的に大きくて、おいしいしいたけができ始めています」


 室内の栽培だし、『朝市』の近くの耕作放棄地で作らせてもらっているので、入手性もいいし、土地を持っている農家さんにもお金が落ちる。


「主だった材料はこんな感じですけど……」


「まさに、『朝市』の総力を上げた商品と言ってもいいですね」


「みんなの意見を聞きながら、試行錯誤して何度も作り直してここまで来ましたからね」


 俺とさやかさんの認識は一致していた。これ以上が思いつかない。


 やはり……と思ったところで、山口さんがつぶやいた。


「その肉まんにカレーかけたらダメですか?」


「ダメだろ!」


 つい、ツッコんでしまった。


 肉まんにカレーがかかっている絵面はこれまで見たことがない。肉まんカレー……。そんなメニューは存在しない。


「僕も何か協力したくて……」


「気持ちは嬉しいですけど……」


「ちょっと待ってください! それです!」


 さやかさんが何か閃いたみたいだった。


----

■お知らせ

明後日の2023年6月7日(水)、「ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ」1巻が日本橋出版様より発売になります。


今回は書籍のみです。

この本が売れないとkindle化はできないという、通常聞くお話と逆なのです(汗)


作品紹介ページ

http://sugowaza.xyz/catcurry/?p=357


1冊でも多く売れないと2巻の発売はできないのです(汗)

実際、本の表紙を見ていただくと分かるのですがどこにも「1巻」と書かれていません。

出版社様の期待は薄いのかもしれません。


なんとか一定数を超えたいと思っています。

ぜひ、ご協力お願いします♪

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る