第200話:俺たちの饅頭とは

「え? そんなあの饅頭に勝てる様な商品が『朝市うち』の総菜コーナーにあったっけ?」


 ベテラン店員のゲンさんの言葉。


「せんむー、そんなバカ売れ商品とか『朝市うち』にはないっスよー? 2号さんを取られてヤケになってるっスか? まぁ、ウチが2号になってあげるっスからー」


 光ちゃん、ことあるごとに俺の愛人になろうとしているけど、冗談だよね? 本気じゃないよね⁉


「そんなお料理があるなら、レシピが気になりますけど……」


 と、松田茉優さん。彼女は料理研究家でもあるから、気になるだろうなぁ。


「ニホンのマンジュウ、気になります」


 ライさんも気になるかぁ……。


「え? ボク、それ食べていいのかな? そろそろお腹減っちゃって」


 エルフはマイペースか! もうお腹減ったのかよ、この育ち盛りめ。そして、のんきだなぁ。


 俺は総菜コーナーから持って来た商品をテーブルの上にドンと置いた。


「「「「「肉まんーーー⁉」」」」」


 今やコンビニでは肉まんが手に入りにくくなっているのだという。コロナ禍でコンビニの利用客が減った関係で常に保温していないといけない肉まんは売れ行きが悪いのだとか。


 それでコンビニから消えたり、個包装になっていたりして形を変えていっている。


 じゃあ、「朝市」では逆に作りたての肉まんが食べられるように、と商品開発を進めていた。


 豚骨ラーメン大好きの福岡ではラーメン専用の麦「ラー麦」を開発しているほどだ。同様に俺たちは肉まん専用の「まん麦」を開発したところだった。


 そして、その「まん麦」を使って肉まんを完成させていた。


「これは『饅頭』じゃないだろうか⁉」


「んー、肉『まん』だから……んぐ、んぐ、『饅頭』なのかなぁ……んぐ、んぐ」


 俺の問いかけに肉まんを食べながら答えるエルフ。もう食べちゃってるし! まあ、いいけど。


「うん、これうまいっスねー。あ、もう1個いいっスかー?」


 光ちゃん、これで昼ご飯を済ます気だな。ちゃっかりしているけど、憎めないのは彼女のキャラなのか……。


「『饅頭』って、ネットの辞書を調べたら、小麦粉などを練って作った皮で小豆餡などの具を包み、蒸した菓子ってありますね。でも、『肉まん』を調べたら小麦粉などを発酵させて作った柔らかい皮で様々な具を包み、蒸した饅頭ってあります」


 さやかさんがスマホの画面を見ながら教えてくれた。


「そう言えば、信一郎さんも『包んだものならOK』って言ってたな。トリニダードトバゴ料理が関係しているのかもしれないけど」


「そうですね。これなら大丈夫だと思います。一応、お兄ちゃんにも確認はとりますけど」


「さやかさん、肉まんこれどう思います?」


「そうですねぇ……」


 さやかさんが、唇に人差し指を当てて考えている。


「肉まんとしてすごくおいしいんですけど、何かしっくりこないって言うか……」


 この商品の開発には、さやかさんも加わっていた。味についても妥協なく突き詰めてきた。


「うん、材料は豚ひき肉に、タケノコ、玉ねぎ、しいたけ、か。シンプルだけど、うまいと思うぞ? これならうちのホテルのメニューとして出しても十分なレベルだ」


 鏑木総料理長が肉まんを二つに割って具だけ、皮だけ食べたりして評価してくれた。彼の太鼓判が押されたので、味についても問題ないようだ。


「狭間さん、散々吟味した材料ですけど、もう一度考えてみませんか?」


 さやかさんのその一言に、少し不安を感じた。


 なぜなら、この肉まんを開発するのに何か月も時間を費やしてきたからだ。ちょっと見直したくらいでこれ以上になる訳がない。


 それくらい突き詰めたものだったからだ。


 ただ、俺はさやかさんの直感というか、ひらめきにも価値を見ている。少し材料について話をし直すことにした。


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記念すべき200話目は肉まんの話でした(笑)

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