第199話:お客に商品を買わせる方法とは
東ヶ崎さんの協力で俺たちは、信一郎さんの商品開発について情報を盗み聞くことができる環境にいる。
それは、世界で一番売れている饅頭の丸パクリ商品を作って売ると言うものだった。しかも、あり得ないことに本家の材料と製法をそのままに、本家の生産ラインを使って作り、本家の販売ルートを使って売るというものだった。
そんなむちゃくちゃが通るはずもない。
信一郎さんの付き人、西ノ宮さんは消費者は偽物だと訝しんで買わないだろうと助言した。
そこで信一郎さんが「いいアイデア」があるのだという。
『売れないのなら、客を教育すればいい』
「「「「……」」」」
会議をしていた俺たち側は絶句した。元々、こちらの声があちらに聞こえてしまわない様に静かにしてはいた。
ただ、今の発言には、それぞれ顔を見合わせるほどあり得ない発想だと思ったのだ。そんなこと誰もできないと思った次の瞬間だった。
『顧客の教育……プロダクトローンチですね!?』
『なんだそれは、説明してみろ』
『はい、プロダクトローンチとは、商品・サービスを発売前から見込み顧客を獲得しておいて、発売日までに情報を小出しで発信していくことです。徐々に見込み客の購買意欲を高めていくマーケティング手法となります』
『この場合、具体的にはどんなことができる?』
『本家のテレビCMに新ブランドを立ち上げる旨、告知しておくとか、WEB広告なんかで対象の年齢層の見込み客に新ブランドが立ち上がることが話題になっていると思わせるとかです』
『なるほど。それやってみるか』
『かしこまりました』
(ブツ……)ここで通話が切れた。
ちょっと待て。既に人気の饅頭の製造ラインを使うだけでもチートなのに、宣伝まで利用しようと言うのか。
そんなの許されるのか⁉
「せんむー、もしかして今のに勝つつもりっスかぁ? 無理っしょー」
気の抜ける声は光ちゃん。気が抜けるかどうかは別として、彼女が言うのはもっともだ。
「僕もスパイスカレーなら自信あるんだけどなぁ……」
山口さんがつぶやいた。
たしかに、山口さんのカレーは既にそこらのカレー専門店に負けないレベルになってきている。
「野菜を使うような物なら、『朝市』の野菜は他に負けないと思うんですけど……」
領家くんも得意分野をアピールした。
その他、「ステーキなら」「ビーフシチューなら」と屋台のメンバーたちも口々に言ってくれている。
でも、饅頭だから……。いや、饅頭! そうか!
「ちょっと待ってて!」
俺は急いで「朝市」の総菜コーナーに走った。そして、ある商品を大量に抱えて会議室に戻るのだった。
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■お知らせ
4日後の2023年6月7日(水)、「ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ」1巻が日本橋出版様より発売になります。
そもそもですが、今回は「書籍」なので紙だけの発売です。
イラストレーターさんは出版社さんが見つけて来てくれた「GAMING」さん。いつものUGさんはキャラクターデザインで参加してくださっています。
今日は、本のイラストを描いてくれなかった理由を大公開です!
「出版社さんとの契約が恥ずかしかったから」
……。ちょっと何を言っているのか……。でも、ちょっとかわいい。それがUGさんです。キャラデザではちゃんとクレジットされているので、本人も喜んでいました。
特典はこちらに準備しています♪
https://kakuyomu.jp/users/nekocurry/news/16817330658210387860
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