第196話:俺の財産とは

「はぁ~~~~~~~~~~~~」


 俺は、何人かに声をかけて「朝市」に来ていた。ただ、気持ちは重い。あの東ヶ崎さんを奪われてしまっている。


 東ヶ崎さんを奪われたということは、同時にチルドレンたちのバックアップも失ったことを意味していた。


 それは、足をもがれた足長蜘蛛、歌を忘れたカナリヤ、十日の菊……。とにかく無用なもの。無力な存在。俺はそんな存在だった。


 広めの会議室の長机に突っ伏して大きなため息をこぼしていた。


「でっかいため息だなぁ……」


 俺のすぐ横でエルフが呆れ顔で俺を見て言った。


「だって、エルフ……俺はもう、道に落ちてるゴミクズ以下の存在だぞ? 戦力のかなめと言ってもいい東ヶ崎さんを奪われて……。ああ……生きていてごめんなさい」


 俺は液状化して机の上にドロドロと広がる謎の液体のようなイメージでいた。


「そのゴミクズに呼ばれて、これだけの人が集まったんだから説明くらいしてよね!」


 座っているパイプ椅子の脚をエルフにコツンと蹴られた。


 そう、会議室には俺の呼びかけに応じて集まってくれた人がいる。


 Vtuberであり、ネットアイドルであり、メイドカフェ「異世界の森」の看板メイドであり、ローカルアイドルでもあるエルフ。


 メイドカフェ「異世界の森」のメイドであり、ローカルアイドルでもあり、Youtubeでは料理の先生でもある松田茉優さん。


 同じくメイドカフェ「異世界の森」のメイドであり、「朝市」ではおじいちゃん、おばあちゃんに大人気で、アイドル的存在でもある光ちゃん。


 大学生ながら「朝市」の代表としてしっかりその役目を果たしてくれている領家くん。


 大手ホテルの見習いシェフであり、「朝市」の「屋台」では人気上位のスパイスカレー屋経営の山口さん。そして、その他のメニューを担当している方々。


 大手ホテルの鏑木総料理長。


 スーパーマーケット「スーパーバリュー」の名物店員ライさん。彼はネパール人で、アジア系外国人のネットワークを持っている。


 ネットワークビジネスの頭をはっている銀髪ボブのワカメちゃん。


 そして、忘れることができないこの人、高鳥さやかさん。高鳥家の長女であり、俺の婚約者だ。


「狭間様、事情は分からないですが僕たちがいます。ぜひ力になりたいので、事情を話してください」


 また「狭間様」になってる……。領家くんが力強く握りこぶしを作って言ってくれた。


「領家先輩もそう言ってくれてますよ? まずは、集まってくださった皆さんに事情くらい話さないと失礼に当たりますよ」


 さやかさんも俺の横に座って応援してくれている。


 そうだ。俺には東ヶ崎さんだけじゃない! 何を凹んでいるんだ! 状況が厳しいのは今に始まった事じゃない。これまでだって、絶体絶命は何度もあった。


 そして、その時 俺一人ではどうしようもない時に、ここにいる人たちが俺に力を貸してくれていたんだ。


 俺は思い直し、これまでの経緯を説明して、「饅頭」の商品開発をお願いすることにしたのだった。


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■お知らせ

7日後の2023年6月7日(水)、「ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ」1巻が日本橋出版様より発売になります。


重大発表として、amazonが先行発売のような形になってしまいました!


amazon発売:6月7日(従来通り)

その他ネット書店発売:6月20日

一般リアル書店発売:6月20日


amazonは特典があります。

http://sugowaza.xyz/catcurry/?p=357


……サイン本も特典になりますか?^^;


レビューを書いてくださった方に送りつけようかと思っています(汗)

1冊買って、レビューを書くとサイン本が1冊届いて、いつの間にか2冊になっているという謎システムです。


ちなみに、サインはまだ考えていません……。


近所の書店で予約注文してくださる場合には、こちらが役に立つはずです。


書籍情報

http://sugowaza.xyz/catcurry/wp-content/uploads/2023/05/674565e3e6b92d69efb09893dee09bbc.jpg

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