第193話:勝負の内容とは
「僕は何で勝負してもお前に勝てると思う。この蜂楽饅頭を見て思いついた。『経営対決』にしよう」
饅頭を見て「経営対決」とは?
流石、思い付きの人。発想が斜め上だ。どこでどう考えたら、回転饅頭を見て経営対決を思いつくのか。
「お兄ちゃん! 経営って言ったら、お兄ちゃんが一番得意なものじゃないですか! それで狭間さんと勝負とか、不公平です!」
さやかさんが止めにかかってくれたみたいだ。
「でも、そいつコンサルとか言ってるんだろ? コンサルの会社やってるのに素人とか客に失礼だろ? 経営のプロなんだろ?」
「それは……そうだけど……」
「ダメなの? 経営のケの字も知らないくせに、客から金をとってるのか?」
「勝ちます……」
「ん? なんて?」
わざとらしく耳に手を当てて「よく聞こえないけど?」のジェスチャーでさやかさんに近付く信一郎さん。完全に煽ってる。
「狭間さんは勝ちます!」
「よしきた」
あ、さやかさんが丸め込まれた。
元々あった高鳥家にあった世界は信一郎さんが知る世界だろう。
でも、俺が知っているのは今の高鳥家の世界。
そして、その2つは乖離している様に見える。俺は俺の世界を取り戻したい。
さやかさんと東ヶ崎さんが一緒に笑って食事ができる空間を取り戻したい。
「いいでしょう。勝負しましょう!」
俺も乗っかるしかなかった。
「はっはっはっ、徹底的に叩きのめして僕の方が優秀であることを示してやる!」
信一郎さんがどや顔で宣言した。
「信一郎様、ステキです!」
西ノ宮さんがうっとりした顔で言葉を添えた。この人もちょっとどうかしている。
相手は経営のプロでしょ⁉ その人と経営の勝負⁉ これはまずいことになった。しかも、国をバックで握っている様な優秀な人たちを連れている状態。
「そうだなぁ……」
信一郎さんがテーブルの上の回転饅頭に視線を送った。
「商材は『饅頭』だ。まあ、包んである食べ物なら何でもいいや」
そうか、目の前にあったからそれを選んだんだなぁ……。深い考えがあるようには全く思えない。
とりあえず、勝負についてはそういう感じか。要するに、饅頭を売って利益を多く出した方が勝ち、と。ようやく俺にも理解できる話になってきた。
でも、そんな泥臭い勝負は今までマンガとかアニメとかでは見たことないぞ。「饅頭売り対決」とか華のない勝負は見たことがない。どこから出てくるんだこの発想。まさか、本当にデザートとして出てきた回転饅頭を見て思いついたってことか⁉
「勝負の期間は3か月。商品開発から販売ルートの確保も含む。実際に売れた商品の利益で勝負だ。クレジットカードみたいな掛け売りの分も売り上げに含める。どうだ?」
「……分かり……ました」
ここまでくると、どんな条件だろうがやや引き下がれないところがある。なんでもござれだ。受けるしかないのかもしれない。
売れ筋の饅頭を東ヶ崎さんに調べてもらって、それに似た商品を開発して……。ダメだ、これでは費用が掛かりすぎる。
頭がよくまとまらない。明らかに信一郎さんのペースに嵌められているからだ。
「さやかは、そいつ側に付くんだな?」
「もちろんです!」
信一郎さんの問いに、当然の様にさやかさんが答えた。
「東ヶ崎は僕のほうに付くよな?」
「……」
東ヶ崎さんがしばらく考えたあと答えた。
「はい。私は、信一郎様のほうに付かせていただきます」
----
■お知らせ
衝撃的な一言のあとですが……。お知らせです。
だいたい10日後の2023年6月7日、「ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ」1巻が日本橋出版様より発売になります。
猫カレーฅ ^•ω•^ ฅ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます