第170話:ワカメちゃんとの会話とは
「もーーーーー! 何なんですか! あの人!」
帰りの車の中で、珍しく さやかさんが悔しそうだ。
マルチのチーム「学生会」のトップと話をする事ができた。予想に反して若く、大学生か大学を卒業して数年と言う感じの女の子だった。
銀髪、ショートボブのワカメちゃん。まず間違いなく偽名だろう。
かなりの切れ者らしく、彼女とさやかさんの会話は目の前で聞いていたのに、俺にはその内容がほとんど分からなかった。
「すいません。さっきの話の内容を聞いてもいいですか? 恥ずかしながら、ほとんど分からなかったので……」
「はい、何からいきますか?」
「まず、あのリストって本物ですか?」
「はい、本物です。セミナーチームのはこの間熊本の時に盗みましたし、ネットチームのは、潜入した者が盗んできました」
盗んできちゃってるし。もう、正義は掌の中にない。普通に「盗みました」って言っちゃってるし。
「本当は、あれを見せて信用させて、私達が長谷川さんの側近だと信じさせて、長谷川さんはもう次のマルチに移動しようとしているって嘘情報を流す予定でした」
「なるほど。仲違いさせるみたいな。ところが、そうはならなかった、と」
「はい、話している最中で嘘とバレれてしまったみたいです。その上で、話に乗ってくれるそうですが、信じていいものか……」
「それなら、良い判断方法がありますよ」
「どんな方法が!?」
さやかさんが前のめりなのと、ルームミラーから東ヶ崎さんもこちらをチラリと見た。興味が、あったらしい。
「そんなに期待される話じゃないですけど、何もしないんです」
「「え?」」
「1週間ほど放置すれば、あのワカメちゃんが長谷川氏に連絡するなら、彼から何かアクションがあるはず。なんたってこっちはリストを持ってるし」
「「ああー」」
また二人がハモった。ホント仲いいなこの二人。
「しかも、ネットチームも黙ってないんじゃないかな?」
「「確かに!」」
「しばらく放置で、その後動きがなければ、もう一度ワカメちゃんに会いますか」
「そうですね」
「東ヶ崎さんは、ネットチームに動きがないかチェックお願いします」
「承知しました」
東ヶ崎さんが運転しながらクールに答えた。
さて、やっと数日少しゆっくりできるかな。このところ忙しかった。今度は東ヶ崎さんやエルフも連れてちょっとドライブにでも……
(テトテトテン、テトテトテン)
そんなことを考えていると、俺のケータイがなった。登録者名が「松田さん」となっている。
彼女は今日の会にはマルチの勧誘の可能性があるから辞退してもらっていたし、結果が知りたくなったのかな?
「松田さんからです」とさやかさんに伝えてから俺は電話に出てみた。
「はい、どうしました?」
昔なら「はい、もしもし狭間です」と出るのが電話だっただろうけど、最近は防犯のために「はい」と出るのが普通になってきた。
しかも、発信元は表示されているのだから、いきなり会話に入ることもある。ただ、この出かたは時として相手が少し驚くので、俺も最適解を模索中だ。
「え!? あ、狭間さん。松田です」
「はい、どうしました?」
「あの……長谷川さんからまた連絡があって……熊本まで私に会いに来るって言うんです」
ワカメちゃんから長谷川氏に連絡が……いや、違うな。どうもワカメちゃんは関係ない気がする。明らかに松田さんの勧誘だろう。
ワカメちゃんが連絡したなら、長谷川氏は勧誘じゃなくて、探りを入れてくるはず。会って確認するしかない。
「俺もそっち(熊本)に行きます。長谷川氏の申し出はOKしといてください。場所は事前に分かると助かります」
「分かりました。時間と場所を聞いておきます」
「何か言われても、絶対に一人で会わないでください。一緒じゃないと守れませんので」
「……はい。ありがとうございます」
なんだ、今の一瞬の間は。
色々話して特に何か隠してたりする訳じゃなさそうなので電話を切った。後は、連絡待ちだな。
ふと、車内を見ると さやかさんが頬をぷくーっと膨らせている。あれ? 俺なんか間違えた?
「なんで、松田さんが狭間さんの連絡先を知ってるですか! あと、『俺がキミを守る!』みたいなセリフー!」
いや、そんな事は言ってないけどな。理不尽なやきもちだろうか。
確か、熊本で合う約束をしたときのために連絡先を交換した気がする。
なんかよくわからないけど、責められながらうちに帰ったのだった。
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