第164話:芸能事務所とマルチとは

 エルフは芸能事務所に所属する事になった。


 特に さやかさんや俺が推薦したわけじゃないけど、社長の鴻上さんはエルフに並々ならぬ期待をしているようだった。多少の忖度はあったかもしれない。


 Vtuberとして身バレが ちらちら囁かれている段階でエルフを狙っていたらしい。


 しかも、早い段階で本人に会ってるし。


 所属しても仕事がないのなら、事務所は前向きにならない。しかしエルフの場合、「朝市」でのイベントは事務所を通しての仕事にしたので仕事ゼロはない。


 あと、アルバイトはメイド喫茶ができたらそこを考えている。


 テレビの仕事は、まだないけれど、そこは鴻上社長の腕を信じたい。


 これだけ福岡に根をはやすと、エルフは地元に戻れなくなってしまう。その辺の話は有耶無耶になっている。



「はいーーー! これで契約完了でーす! エルフちゃんは正式にうちのタレントですからー!」



 鴻上社長のテンションが高い。



「よろしくお願いします。いい具合にこき使ってください」


「なんだとー! 他人事だと思ってー!」



 いや、これは謙遜して言ってるだけで「忙しくなるほど仕事を取って来てください」って意味なんだけどな。エルフに睨まれてしまった。



「具体的にはいつから、何から始めますか?」


「まずは、宣材写真からですね」


「センザイ写真?」


「各番組のご担当者さんに挨拶回りするんですけど、手ぶらだと印象に残りません」


「確かに」


「写真集なんかがあれば、渡してきますけど、それもないでしょ?」



 まあ、たった今契約したばかりだしね。



「だから、資料を作って渡してきます。後は、会社のホームページのタレント一覧に載せて……」



 なんか色々あるらしい。



「じゃあ、エルフをこのまま置いていってもいいですか?」


「え!?」


「助かりますー! 実はお願いしようかと思ってて……」



 エルフは驚いていたけど、そのまま写真を撮られに行くらしい。


 まあ、飛び込んで慣れないとね。



 エルフが「後で憶えてろ」って、目をしてる。俺は何も気づかない事にした。



(トントン)「失礼しまーす」



 ガチャリと急に来客みたいだ。しまった、長居しすぎたか?


 そこにいたのは、松田さんだった。



「あれ!?」


「あー! 高鳥オーナー、狭間専務! 紹介しておいた方がいいと思って!」



 鴻上社長が、話し始めた。



「例の収録でスタッフさんの評判もよくて、暫定的に松田さんを使うことになったらしいんです! だから、うちで契約を、ねー!」


 実にしっかりしてる。いつの間にか話をまとめていたのだろう。さすが、やり手だ。


 ***



「鴻上社長、ここのタレントさんとか、契約前の子たちがどんなとこに集まってるか情報ないですか?」


「それはどういう……?」



 引き続き、株式会社スタープロモーションという芸能事務所で社長と話をしていた。


 エルフはどこかに連れて行かれたので、俺とさやかさん、東ヶ崎さんが残ってる。



「先日お願いした、長谷川氏とコンタクトを取っている人を探していて……」


「ああ、そういう事ですか。基本的に仕事には直行直帰なんで事務所には用事がないとあまり来ませんからね」


「そんなもんなんですか」


「それとなく事務所に来た人間には聞いてみたんですが、いずれも知らないみたいで。変なヤツからの連絡がなくて胸をなでおろしてましたよ」



 そうか、社長には長谷川氏がマルチの勧誘をしてる事をまだ知らなかったか。


 ここで事情を話して、詳しく情報取りをしたいところだけど、この芸能事務所にマルチが入り込んでいる証拠も何もない。感覚だけで物を言っているのでそれ以上はツッコめないでいた。



「あ、近所の『喫茶モホロビチッチ』には、事務所に来た女の子達がよくお茶をしていくみたいですよ」


「ありがとうございます!」



 なんだか不連続そうな名前だけど、情報を得たので早速行ってみることにした。



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