第160話:モーニングコーヒーとは


「これが伝説のモーニングコーヒーですね⁉」



 翌朝、部屋のコーヒードリッパーでコーヒーを入れてあげると、さやかさんが嬉しそうに言った。



「どう『伝説』か分かりませんが、どこからどう見てもモーニングコーヒーですね」


「はい、まさか私がモーニングコーヒーを飲む日が来るとは……」



 多分、さやかさんが言っているのは、単なる朝にコーヒーを飲むということではなく、異性と結ばれて翌朝に一緒にコーヒーを飲むという事色々をひっくるめて言っているのだろう。



「太陽が黄色いというのは比ゆ的な表現だったみたいですね」



 コーヒーカップを持ったまま窓から外とを見ているさやかさん。どこでどんな情報を入手しているのか、一度聞いてみる必要があるかもしれない。




「さやかさん、あんまり窓際に立つと外から見えてしまうかもしれませんよ?」


「ここは15階なので、道を歩いている人からは見えないでしょう」


「それでも、他の建物から見えてしまうかもしれません。こっちに来て座ってください」



 俺が座っているソファの隣をポンポンと叩く。


 そうなのだ、さやかさんはまだ下着姿なのだ。白くてきれいな身体に純白の上下の下着だけの状態。上下ともレースの部分がとても可愛くて、それでいてエロくて、下手したら凝視してしまいそうだ。



「おはようのキスをしましょうか」



 ニコニコしながら さやかさんは俺の隣にちょこんと座った。



「起きてすぐしたじゃないですか」


「キスは良いものです。何度でもいいじゃありませんか」


「抗うつもりは全くありませんけどね」



 もう一度、抱きしめてキスをする。



「朝食も付いているんですから、ここで先にコーヒーを飲んでしまってよかったんですか?」


「こうして二人でいられるのもこの時間くらいだと思うと名残惜しくて……」


「どうしてそうなんですか。今日はずっと一緒にいるでしょうし、帰るのも同じ家ですよ?」


「家ではお部屋が別々ですし……」


「じゃあ、一緒にしたらいいじゃないですか」


「壁を壊すとかですか?」


「それだと、建物の強度とか心配です。3階とか丸々空いてるじゃないですか。あそこを二人の部屋にするとか。かなり広いけど」


「3階! その発想がなかったです。ずっと5階がお部屋だったので、あそこが私の部屋だと思い込んでいました」


「5階の部屋も十分広いんですけど、二人で過ごすには少し手狭です。二人で過ごすのはリビングでもいいんですけど、東ヶ崎さんもいますし、今だとエルフもいます。寝室はいっしょにできないですか?」


「できます! 帰ったら早速考えます」


「そうしましょう」



 俺達は、甘々な朝を迎え、しばしモーニングコーヒーを楽しんだ。今日はこれから、エルフのクラスメイトに会いに行くんだ。


 エルフがあれだけ嫌がっている相手だ。一筋縄ではいかないかもしれない。表面的にはにこにこしていても、裏ではどろどろしているパターンだってあり得るんだ。


 それなりに、気を引き締めていく必要がある。



「狭間さん、カッコいい顔をしていますよ? これからJKに会いに行くんですから、もう少し変な顔をしていないと、うっかり好かれてしまいますよ⁉」


「人をジゴロか何かみたいに言わないでください」


「狭間さんは、私にだけモテていたらいいんです」



 さやかさんが首に抱きついてきた。二人の関係は一気に動き始めたのを感じた俺だった。



 ***



「結局、朝ごはん食べ損ねましたね」


「そうですね。もったいないことをしました」



 部屋を出ないといけない時間が9時だったので、結局ご飯を食べに行かずに部屋でイチャイチャして過ごしてしまった。


 朝食がバイキング形式だったみたいなので、俺たちの分の食事が無駄になることはないと思う。ワンガリ・マータイ氏も悪い顔はしないだろう。



 それでも、ホテルの朝食なのでさぞ豪華だっただろう。



 いや、もしかしたら、気合が入っている時の東ヶ崎さんの朝食の方が豪華でおいしい可能性があるので、ガッカリしたのかもしれない。


 それはそれで重要な事なので、ぜひ経験しておきたかった。



 俺達は電車に乗って、三人のJKが待つという待ち合わせ場所に向かったのだった。

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