第134話:増えるプレゼントとは
「ぶーーーーー!」
さやかさんが、頬を膨らませて俺の前に立ちはだかっている。
夕方過ぎの高鳥家のリビング。俺はテーブルの椅子に座って東ヶ崎さんが淹れてくれたコーヒーを楽しんでいた。
「何でエルフちゃんが新しい可愛い服着てるんですか!?」
「あ、可愛いですか? よかったー。あのくらいの歳の子ってどんなのが可愛いか分からなくて……」
「狭間さん! 私はやきもち妬いてますよ! ぶーぶー!」
あ、自分で「やきもち妬いてますよ」って言っちゃう感じなんだ。
腰に手を当てて、「怒ってます」って感じのポーズ。さやかさんの場合、可愛いからあんまり怖くないけど。
「ほら、また頬が膨れてますよ」
ムニムニと人差し指で さやかさんの頬を弄ぶ。
(ぷすーー!)両側から頬を押すと空気が抜けた。
「もーーーーーっ! 狭間さん、私で遊んでますね!?」
すいません。可愛すぎてつい……でも、これは言えない。
「いや、エルフにはご褒美と投資なんですよ」
「ご褒美? 投資?」
「はい。今日の『朝市』でのイベントなんですが、期待以上の効果がありました」
「この間、言ってたやつですか?」
「はい」
さやかさんが俺の横の椅子に座った。一瞬で仕事の目になってる。さすが社長。
「今日初出店のコーンスープが完売しました。オーナーさんが感動して泣いてましたよ」
「そのイベントにエルフちゃんも出たんですか?」
「そうです。とりあえず、アシスタントとして」
「料理を渡す係でしたっけ? 当初、狭間さんがやる予定だった」
さやかさんが顎に人差し指を当てて思い出しながら話した。その何気ない仕草が可愛くて、ちょっと気が逸れた。それでも一瞬で持ち直して受け答えした。
「そうです。おっさんが出るより若い女の子が出た方が効果が高いと思って頼んでみたんです。そしたら、注目度が高くて思わぬ広告効果がありました」
「エルフちゃん、良くも悪くも目立ちますからね」
「そこで思ったんです。アイドル事務所の話がありましたよね! なんかできないかなって」
「なるほど……週明けに挨拶に行く事になりましたから、エルフちゃんも連れて行ってみますか?」
「いいですね!」
「でも、私は誤魔化されませんから! 狭間さんがデレデレしながら、JKのエルフちゃんに服をプレゼントした事を!」
デレデレはしてなかったと思うけど、見てきたかのように責められてるし……
「週末は、さやかさんとの指輪を見に行きましょう! その後、さやかさんにも服をプレゼントしますから」
「……」
あれ? ダメだったかな?
「何も言えなくなっちゃいました……」
「俺はさやかさんの服見たいですよ? 週末久々にデートしましょう」
「つーん」
さやかさんがむこうを向いて拗ねてしまった。口で「つーん」って言っちゃってるし。ヤバい、可愛すぎる。
「あ、お嬢さん。可愛いですねー」
向こうを向いたままの さやかさんに話しかけてみる。
「よく言われます。つーん」
「可愛いなぁ、モテるんでしょうー?」
「そんな事ありません。私の彼氏は彼女をほったらかしで、他の女の子に服をプレゼントしたりするんです」
「それは悪いヤツだなー。じゃあ、俺と週末デートしようよぉ」
「東ヶ崎さーん! ここに悪い人がいますよー!」
ああ、東ヶ崎さんに言い付けられてしまった。
「大丈夫ですよ。お嬢様には私がいますからね」
芝居がかっているが、さやかさんが泣き真似をして、東ヶ崎さんがそれを慰めている。茶番?
「これは、東ヶ崎さんにも服のプレゼントが必要ですね」
「「え!?」」
俺と東ヶ崎さんの声がハモった。
でも、まあ、東ヶ崎さんにはふだんお世話になりっぱなしだし、いい機会かも。
「では、一緒に服屋に行きますか」
「しょうがないですね」
さやかさんがにこりとした。もうよく分からないけど、これで さやかさん、東ヶ崎さん、エルフ、みんなに服をプレゼントすることになる。これで平等(?)になったな……
どうやらこの週末のお出かけは、東ヶ崎さんも含めた三人でということになりそうだ。服を買いに行く前に指輪を買いに行く話をしたことを さやかさんは覚えているのだろうか。
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