第117話:閑話 東ヶ崎さんの進退とは
「東ヶ崎さんの今後なんですけど……」
「はい。東ヶ崎さんがどうかしましたか?」
この声は、もしかしなくても、お嬢様と狭間さん。
私、東ヶ崎愛は再びとんでもない場面に遭遇してしまいました。
2階リビングのローテーブルの下にスリッパを飛ばしてしまって、拾うためにテーブルの下に潜ってました。
そこに、背の高い方のテーブルの方にお嬢様と狭間さんが来てしまったのです。
すぐに出ようと思っていたんですが、驚かせてはいけないと、タイミングを見計らったのが運のつき。出るタイミングを失ってしまいました。
ローテーブルの下に潜んでいるという、異常な状態。絶対に見つかる訳にはいきません!
そして、その会話の内容が……
「修二郎さん達はちょくちょく帰ってくるようになった訳ですし、東ヶ崎さんの仕事をどうするか、なんですが」
「はい」
「まず、学校ではどうなんですか?」
「はい、『仲のいい友達』という設定で、学校でもよく一緒にいます」
「それだと、本来さやかさんが仲良くなるはずの友達ができにくいとかないですか?」
「どうでしょう。東ヶ崎さんが来てくれる前に既に人間関係はできていたので、特に問題はないとは……」
「逆に、その中によく東ヶ崎さんが入りましたね!」
「そうですね。東ヶ崎さんはコミュニケーションスキルが高いみたいで……」
「すごいなぁ! じゃあ、その点はそのままでいいのか」
あぁ……自分がいないところで褒められるむず痒さ……こっそりお二人の夕食に一品足させていただきましょう!
「家事なんですけど、俺もこれからはできることをやっていきたいし、できない事はトライしていきたいんです」
「それはすごくありがたいんですが、狭間さんの場合は、程々にして仕事を進めないと社員さんたちの将来がかかってますからね?」
「そっか。家事は程々で仕事をする時間も確保しないとか……」
「そういう意味では、東ヶ崎さんがいないとこの家は成り立たない状態です」
「彼女優秀ですからね……」
お二人とも、夕飯に二品追加が決定です!
「今度は逆に、修二郎さんと清花さんが帰るようになったら、東ヶ崎さんの負担が増えちゃうんじゃない!? 家事専門で追加要員を募るとか?」
狭間さんは一品に減らします!
「家事は私もしますので、できるだけこのままがいいです。ずっと一緒だったから……新しい人が入ると、どうしても気を使ってしまいそうで」
「それはあるでしょうね。さやかさんとの関係を見てたら分かります。絶対割って入れない姉妹感っていうか……。俺も最近、東ヶ崎さんの事を姉のように思い始めてますから。年下なのに」
やっぱり、お二人とも夕飯三品追加決定です!
「そういう意味では、考えるまでもなく、東ヶ崎さんははこのまま続投で、彼女に変に負担がかからないように、俺達は自分でできることは自分でするってとこかな」
「そうですね。女の子同士のお買い物とか、お友達もいいんですけど、やっぱり東ヶ崎さんがしっくり来るっていうか、安心感があるんです」
「ふたりで買い物とか想像しただけで微笑ましい」
お二人共、夕飯が四品増えましたよ!
「明日は、パパもママも両方帰る日なんで、夕飯は私が作ります!」
「きっと喜びますよ」
「今日のうちにお買い物に行っておきたいです」
「了解です。俺、車出しますよ」
「お願いします。あ、東ヶ崎さんにも声をかけないと」
「またどこかで働いてますよ、きっと」
「たまにはゆっくりしてほしいのに……」
お二人が行ってしまわれた。その瞬間を見計らって、ローテーブルがら出てきて事なきを得ました!
■■■その日の夜
「東ヶ崎さん、今日なんかあったんですか!?」
「え? なんでですか?」
「夕飯がめちゃくちゃ品数多いし、すごい豪華じゃないですか!」
「え? そうですか? たまたまです♪」
その日、高鳥家のテーブルの上は、満漢全席の様相を呈していたという。
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