第85話:朝市の集客と魅力とは
「朝市」も基本問題ない。確かに責任者はいないけど、決まった業務を決まったようにこなす分にはパート社員、アルバイト社員だけで問題がない。
「森羅」からの依頼で野菜を融通したりする必要があるのだけど、特別大きな判断は必要なく、通常の社員で対応できている。
現在では、何か問題が起きた時は、俺とさやかさんが対応している。今回もその一つ。問題ではないけど、新しく建物を建て増しすることにしたのだ。不安にならない様に、先に全スタッフに話をしておくのが今日の目的だ。
これで当初予定していた建物が全て建てられることになる。
ただ、よりきめ細かい対応をするためには、現場に責任者が欲しいのだ。
この「朝市」の集客には複数の「仕掛け」がある。
一つ目は、何と言っても「新鮮な野菜」だ。
近所の農家が持ち込む新鮮な野菜が産地直送で並べられる。しかも、安い。これが最大のウリなので、ここはブレさせてはいけない。
二つ目は、まさに選果場の隣にあること。
農協で売れなかったり、価格が納得できなかった野菜が持ち込まれる。黙っていても向こうから仕入れがやってくるのだ。
これにより農家さんが「朝市」に来てくれる。来たら来たで何か買ってくれる。だから、簡単な日用品を置くようになった。それも地味に売り上げにつながっている。
三つ目は、農家さんによる六次産業。
加工食品も並んでいるし、飲食店を経営する人もいる。新鮮な材料で作るおいしい料理が魅力となっている。最近では、出店したいという依頼もあるので、料理のクオリティも随分上がった。
四つ目が、まただけど、農協の選果場のすぐ隣にあるということ。
農協の職員やそこに野菜や果物を持ち込む農家の人は必ず「朝市」の前の道を通る。
ランチ目的や休憩目的などのために、「朝市」を利用する。
五つ目として、「森羅」のサイトでの紹介だ。山口さんのようにこれを見て来てくれる人もいる。このサイトは、地域情報としては多い方の月間100万PVを超えている。
なぜか春先にはアクセスが多くなるので、今はかなり好調だ。
これらは常にある「集客」と言える。
ただ、これだけでは人は慣れるし、それ以上の売り上げにはつながらない。段々集客は弱くなっていくだろう。
そこで、対策としてイベントを開催している。
以前 視察に行った直売所のように夜店の屋台みたいなヨーヨー釣りや射的、ポップコーン無料サービス。産直野菜が当たるくじ引きも人気だ。
ローカルアイドルのライブやローカルのお笑いタレントのトークショーもやってる。ローカルタレントさんを呼ぶと、ローカルテレビの取材も増えるという説は本当なのか……?
そして、今回「屋台」を追加する。
1日限定のお店や人気のお店のアンテナショップ、腕試し、趣味の披露等々……実際に営業して利益を出してもらうのだ。
そうすることで、出店したお店狙いのお客さんはもちろん、今後出店を目論む人が下見に来てくれるようになる。
「朝市」は今 完璧だった。しかも、更に上へと進もうとしている。
そう思いながら、屋台の打ち合わせを さやかさんやスタッフの人と話していた時に話題が出た。
「あ、せんむー。お隣なんかできるんですかー?」
ちょっと気が抜ける感じの喋りは
フルネームは
甘えっ子キャラがおじいちゃん、おばあちゃんに人気で可愛がられているみたい。スタッフにもお客さんにも人気だ。ショートカットで活発な感じで、これはこれでいい人材だ。
現在は、「森羅」の社員となっているけど、彼女も会社独立の折には「朝市」の社員へとシフトする。ただ、彼女はスタッフへのお願いは上手だけど、企画などには向いていないのだ。まあ、責任者向きではない。
「隣の土地は誰かが買ったってことだったけど、誰かまでは分かってないんですよ」
「そーなんですかー。いま地面になってますよー」
地面とは!? ……後で土地を見て分かったけど、草とかで荒れ放題だったのが、整地されたと言う意味らしい。地面……言わんとするところは分かった。
ふと思ったけど、東ヶ崎さんの調査能力は はっきり言って異常だ。とんでもない調査能力がある。家事などをしながら、かなり難しい情報を正確に調べてくる。人の能力を超えていると思っていた。
でも、バックに「チルドレン」がいると思えば少し納得も行く。その高鳥家ですら「誰かが買った」までしか分からないっておかしくないか!? 企業などが購入して たまたま実質的な所有者が分からないとか、そういう意味かな?
隣の土地に何ができるのか……今の「朝市」がどうにかなるとは思えないけど、少し不安にはなる。
そして、1ヶ月後の「朝市」の増設部分の上棟式のとき、その正体が分かるのだった。
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