第67話:合コンとは

 私、高鳥さやかは初めての合コンに期待に胸が膨らんでいます!


 小さい時からパパやおじいちゃんにビジネスにおいては、「人脈が重要」と聞かされてきました。今の会社を発展させるためには、パパとおじいちゃんの人脈を借りざるを得なかった。



 だからこそ「合コン」!



 東ヶ崎さんはいつの間にか「県人会」という福岡県の若手社長たちの会を知っていて、この間の色々ではそこの方達にすごく助けていただいた。


 私も有効な人脈を得る必要がある!


 同じクラスのお友達に誘われた「経済交流クラブ」。この新歓コンパに誘っていただいた。服も少しいいドレスを着てきた。名刺もある。会社も好調。全方位完璧だわ!



 *



 待ち合わせの場所には、10分前に到着……なんだか、バーと居酒屋さんを足して2で割ったような感じのお店。


 意外とこじんまりしていて、キャパは50席から60席くらい?


 もっとホテルのパーティー会場みたいなものを想像していたのだけど、大学の近くだからかな。


 それ以上考えずにドアを開けた。



「わー!」っと店内で歓声が上がった。



 何かと思ったけど、みなさんに注目されている?


 勝手に立食形式かと思っていたのに、テーブル席だった。それだと、あまり多くの方とご挨拶できないのでは? テーブルが8卓とカウンターのお店。今日は貸し切りと表のドアに書いてあった。


 不思議なことに壁側の席に女性が座っていて、その向かいに男性が座っている。『郷に入っては郷に従え』と言うし、壁側の席で空いている所を探す。


 キョロキョロしていたら、クラスメイトの新里あらさとまどかさんと田中陽子ようこさん、佐藤千晶ちあきさんが手を振っていた。


 彼女たちとは大学で知り合った同じクラスの方。同じ高校のクラスメイトは違う学科に進んだので少し寂しかったところ。すぐにお友達ができて僥倖ぎょうこうでした。



「きゃー、高鳥さんー! こっちこっち!」


「お待たせしました」


「きゃーきゃー! 高鳥さん、かわいー!」


「ありがとうございます」



 思っていたよりももう少しカジュアルな会だった?

 色んな事を考えつつ、新里さんの横に座った。



「今日は全部で何人くらい いらっしゃるんですか?」


「んー、分かんないけど、全部で30人か40人くらい? 多いよね! さすが新歓!」


「そうですね……」



 新里さんがちょっと興奮気味に教えてくれた。


 想像では100人とか200人だったけど、これは先に聞いておかなかったのがいけなかった。思い込みって恐ろしい。


 まあ、福岡の県人会も会員は100名くらいでも、毎回集まるのは30~40名程度と聞きました。そんなものなのかもしれません。



「今日は、領家りょうけ先輩がくるらしいよ!」


「領家先輩って?」


「知らないの? 高鳥さん。うちの学校で一番のイケメンじゃないかな? 家もお金持ちらしくて!」


「へー、そうなんですか。ちなみに、どんなお仕事を?」


「さー? 先輩来たら聞いてみたらいいんじゃない?」


「そうですね」



 開始前からワイワイとかなり活気がある。男性陣の視線が絡んでくるようで少し気になるけど……



「みんなお待たせ―!」



 声高らかに男性が入った来た。口元が平時でも笑っているような表情でふわっとイケメンスタイルの髪型。


 ゆったりした緑色のカーディガンに、綿の白いシャツ。ダークブラウンのズボンに革靴。



「きゃー! 領家先輩! こっちこっち!」


「お待たせー!」


「おつかれでーす!」


「おつかれ!」



 どうやら、あの方が噂の「領家先輩」らしい。男女ともに人気らしいです。


 ここが私の思っていた場と違うということに気づいたのはそれから10分後のことだった。

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