第5話:JKの作戦とは

 高校生アルバイトの高鳥さんには作戦があるとの事だった。その話をファミレスで聞くことになった。


 既に会社をクビになっている俺としては正直どうでもよかったけれど、彼女のキラキラした目を見てしまうと話くらいは聞いてみようと思ったのだった。



「多分、これから会社は大変なことが起こります」


「俺一人が辞めたくらいじゃ会社はどうにもならないよ」


「そんなの分からないじゃないですか! 一番多く書類を作ってたのは狭間さんでした! クレーム対応もいつも狭間さんでした!」


「そりゃぁ、俺が一番下っ端だったからだよ。俺がいなくなったら、他の人が代わりにやるよ」


「私、もうしばらくバイト辞めません! 本当は頭に来たから辞めようと思ったけど、内側から会社の情報を狭間さんに流します!」


「ははは、ありがと」



 正義感で言ってくれているんだろうけど、一歩間違えれば犯罪だ。ほどほどで諦めてくれないだろうか。


 ただ、めんどくさい作業なので、すぐに飽きてくれるだろうと思っていた。



「俺ももうしばらくLINEのグループに入ったままにしておこうかと思ってさ。やっぱりちょっとは心配だし……ただ、辞めた会社の情報を知るっていうのは、悪用しないにしてもグレーだから、高鳥さんもほどほどにね」


「はい、私も悪用はしません。ただ、あの社長と専務に一泡吹かせてやろうと思っています!」



 何か個人的な恨みでもあるのかな!? 確かに社長はワンマンだ。朝言ったことが、夕方には変わっていることもざらだ。


 同族経営で、専務は社長の娘という訳だ。専務も威圧的な傾向があって他人の意見を聞かない傾向にある。


 そんな専務も俺が入社したころはまだ20代で、18歳で入社した俺からしたらキラキラのお姉さんに見えた。入社直後は色々と面倒も見てもらったし、週末にデートしたりもした。あの時のあの表情は俺に気があると思っていたんだけどなぁ。


 ただ、女性経験の浅い俺だから勘違いだったと言われれば、そうだったのかもしれない。俺的には付き合っていると思っていたのに……



「あと、うちに来ませんかというお誘いの件なのですが……」


「気づかいありがとう。でも、ご両親もびっくりするだろうし……」


「あ、母親はあちこち飛び回っているし、父親は単身赴任なので、家は私だけです。ちなみに、部屋も空いています」


「ええ!?」



 そっちの方が余計にまずいんだけど。



「まあ、とりあえず、うちを見てもらって、それから判断しても良いんじゃないでしょうか?」


「え?いや、その……はい……」



 お金が全くない訳じゃないけれど、何か月もホテル暮らしをする訳にもいかない。現実を前に甘えが出てしまった俺だった……

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