第4話:JKとファミレスに行くとは

 狭間新太28歳。高鳥たかとりさやかさん18歳。彼女からしたら、俺は「おじさん」だろう。だって、歳は10個も違う。彼女は会社の中で人気みたいだった。


 会社は、20代、30代が多くて、そんな中、彼女は10代。しかも高校生。物珍しさもある。


 しかも、可愛いんだ! ちょっと意地悪そうな顔をしてるから、俺は苦手に思ってたけど、とにかく人気があった。


 彼女に人気があるのは、容姿が優れているだけではないのだろう。人付き合いもきちんとしているという事。


 会社では、ほとんど話したこともなかった俺にまで会いに来てくれたという事か。でも、それ、逆の立場だったらストーカーだから。事案だから。俺だったら捕まっちゃうから。


 ただ、彼女に見習うべきところもあるなぁと反省もした。だって、俺は会社をクビになるような男だから。



「狭間さん! 私はずっと狭間さんは優秀な方だと目を付けてました!」



 微妙に上からなんだけど、これも若さゆえ。彼女に悪気などないのだ。JKに認められておっさん嬉しいよ。



「ぜひ、うちに来てください!」


「うちって……」



 もしかして、彼女は大企業のご令嬢で、彼女のお父さんの経営する会社への引抜的な意味で「うちにきませんか」ってことは……



「狭間さん住むところが無くなると思って……」



 やっぱり、そんな夢物語はないですよねー。彼女は親切心、同情心で言ってくれている。やんわりお断りして、次のことを考えよう……こんな、高校生にまで心配かけている俺って本当にダメな大人だな。



「狭間さん、ここじゃなんですから、場所を変えて話ができませんか?お願いします!」



 会社を突然クビになって やさぐれた俺の心をJKと話ができるというラッキーで少しでも慰めようと思ったのかもしれない。俺は弁当を買うのをやめて、ファミレスに移動することになった。



 ***



「何でも食べていいよ」


「え、でも……」



 俺が失業者だからお金は大丈夫か、という事だろう。



「今日明日で食べていけなくなるほどじゃないからね。少々食べたって全然大丈夫だから、デザートまでいっていいよ」



 そういうと、表情が明るくなったのは、やはり高校生か。ほほえましく感じてしまった。俺に会いに来てくれた彼女は、お昼ご飯をまだ食べていなかったみたいで、俺と同じく日替わりランチを注文した。


 俺はご飯大盛に、彼女はご飯半分に、それ以外は同じハンバーグ+チキンステーキが今日のメニューだった。


 話すと言っても、食事が出てきたら先に食べるのが普通だ。高鳥さんは、こういった場に慣れていなかったのか、こちらをちらちら見ながら食べていた。


 ちゃんと最初に「まずは、食べようか」って言ったんだけどなぁ。


 食事の後、デザートを注文して、注文の品が届く前に彼女は待ちきれなかったのか、俺に「作戦」を話し始めたのだった。

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