第6話:JKの家とは
ああ、俺ってダメなやつだ。お世話になるつもりなんて全くないのだけど、「とりあえず家を見てから判断したらいい」という高鳥さんの誘惑に負けて、目の前のJKの家までのこのこやってきてしまった。
高鳥さんの家は、意外にもうちから比較的近くて、歩いて20分くらいの一軒家だった。
ただね、広い!
これは一軒家と言っていいのだろうか。俺の感覚からしたらビルかマンションなんだけど。
1階は、ガレージがあって高級車が並んでいる。彼女はまだ高校生だし、多分免許は持っていないはずだ。
ご両親は、出張と単身赴任と言っていたし、乗らないのに置いているのだろうか。お金持ちの考えは分からない。
玄関は2階にある。彼女の家は5階建てでエレベーターも付いている。個人の家にエレベーターがついているの初めて見た。
「いらっしゃいませー!ここが私の家でーす!」
「高鳥さんの家ってお金持ちなんだね……」
「そうですか?パパが手広く仕事をやっていて……」
俺の感覚で言えば、これだけお金持ちだったら単身赴任なんかせずに家で暮らせばいいのに……そうもいかないのだろうか。高校生の娘を置いて行って不安などないのだろうか。悪い虫がついたり……例えば俺とかさ。
「あ、さっきデザートまでいただいてしまったんですけど、コーヒーくらい出しますね!」
高鳥さんは、2階のキッチンでコーヒーメーカーを使ってコーヒーを淹れてくれた。リビングも2階にあって通常時はエレベーターで上がるらしい。俺の常識と全く違う家だった。
リビングは50畳とかあるのかなぁ。とにかく広い。こんなにデカいテレビが置いてあるのも初めて見た。
金持ちの家はテレビと風呂がデカいと勝手に思っていたけれど、テレビがデカい説は正解だったみたいだ。
考えてみたら、これだけ家がお金持ちなのに、なぜ彼女はバイトなんかしているのか。謎が謎を呼ぶ感じだ。
リビングでは、革の大きなソファに案内され座った。出されたコーヒーは期待以上に美味しくて豆が良いのか、淹れ方が良いのか、その両方が良いのか、とにかく困惑した。さっきのファミレスのコーヒーを楽々うわまっている。
「狭間さんのお部屋は5階に準備しています。以前、兄が使っていた部屋なんですけど、机とかベッドとか、ちょっとした家電は置いて行ったので好きなのを使っていいですよ?」
俺のアパートは、畳だったからベッドが置けなかったんだ!ベッドあると助かる!家電もあんまり置いていなかったので、使わせてもらえるものがあるのは本当に助かる。
いや、住まないよ? 仕事先のバイトのJKの家に住むわけないよ? でも、条件はすごくよかった。
「じゃあ、早速 部屋を見てみますか!」
高鳥さんに案内されて部屋に行くことになった。当然エレベーターで5階に上がる。5階でエレベーターの扉が開くと廊下があり、左右にドアがあった。なんかホントにビルみたい。
「ここです」
そう案内されたドアを開けて見ると、中にはワンルームマンションの部屋があった。部屋にキッチン、トイレ、風呂があるのだ。
「ここ、もうマンションじゃない!」
この一部屋だけでワンルームマンションとして十分成立していた。
「そうですね。パパは引っ越すことがあったらマンションとして貸そうと思ったみたいで、こんな感じです。ちなみに、隣の部屋は私の部屋です♪」
「いやっ、こんな豪華な所、俺は住めないよ! 失業中だし予算オーバーだし」
「え?お金なんて要りませんよ? 好きなだけ住んでください。どうせ部屋余ってますから」
「いやいやいやいや、それじゃ悪いし、第一、男女で住むなんて……」
「狭間さん、私に何かするつもりですか?」
彼女がにやりといたずらっぽい笑いを浮かべる。
「いや、しないけども……」
「じゃあ、良いじゃないですか。男の人がいた方がセキュリティ的にも安心ですし」
俺はきみのセキュリティ意識が心配だよ……
結局、1週間後には今のアパートを追い出されるのだから、渡りに船というか、これ以上ない好条件というか、一時避難的に住まわせてもらうことにしてしまった。
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