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いや別に友達じゃ無いし。何ならさっき初めて話したばかりのクラスメイトなんだけど。
などと心の中で言い訳していたらグラサン男は、とうとうグラサンを取って素顔を晒した。
途端に音楽室に居る女子がザワつき出す。
無理もない、グラサンを取った彼は顔面偏差値が最高レベルのイケてるメンズだった。
「ありがとう。でも私はグラサン男じゃないし、イケてるメンズでもなくて
何故かイケメンにお礼を言われ、何かを手の中に押し付けられ……。
「――えっ?!」
何で? グラサン男って声に出して言って無いけど! それにイケてるメンズってのも。
いや、怖いんですけど!
言葉も無く立ち尽くしていた僕に赤月は最大級の笑顔を向けて来た。
それと同時に女子の黄色い声がこだまして何デシベルか分からないが、まるでアイドルのLIVE会場の様な喧騒が僕達を襲う。
「君、藤原始くん。表現力が有り余っていて凄く良いと思うよ。私は、うん」
何だか探偵に気に入られたみたいだ。だが、僕は認めない! 心を読むなどとは。
「赤月、お遊びはその位にして事情聴取始めるぞ」
連れのスーツで決めた大男に呼ばれ渋々と彼の所に戻って行った。
「おい、今のは何だ? 探偵だって?! いやに親しげだけど知り合いなのか?」
柿崎は鳩が豆鉄砲食らった様な顔をして聞いてきた。
「いや、『まったく』の初対面だ」
「でも、名前……。藤原一言も話して無いのに、何でフルネーム知ってるんだよ」
矢張り、心の声が漏れ出た訳じゃ無かったんだな。他に考えられる事は僕の容姿と名前を誰かに聞いた事ぐらいか。
動揺して忘れてたが、さっき渡して来た物は何だろ?
緊張の余り手の中で握り潰されクシャクシャになった名刺を伸ばす。
そこには『赤月探偵事務所』失せ物、浮気調査など困った事は何でも承ります。
と、印刷されてて、裏には走り書いた様な字でこう書かれてあった。
『始くん。君に是非、助手を頼みたい。バイト代は弾むよ』
探偵の助手? この学校はバイト禁止じゃ無いけど、三年のこの時期にバイトは遠慮願いたい。
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