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二組の生徒がほぼ集まったところで、警官達の所へ一人づつ呼ばれ話を聞かれる。
質問は殆どスーツの大男がして、赤月は黙って聞き役に徹してる様にみえるが、時たまコッチを見ては軽く手を振りニッコリ微笑む。
僕は、どうしたらバイトから逃れられるのか思案していた。
「えーと、名前教えてくれるかな? それと一年一組、サッカー部所属の
僕の番が来てスーツの大男が、警視庁から来た生活安全部の少年事件課の刑事で
「藤原始です。あの……彼、新井君の具合はどうなんですか? 僕は面識が無いし、何も知ってる事は無いですけど、僕達の教室から飛び降りたとクラスメイトから聞きました。二組は三階ですから大怪我してるんじゃないかと思って」
「ふむ、藤原君は何故、三階から飛び降りたのに命には別状無いと思ったのかな?」
「もし、飛び降りた時点で亡くなっていたとしたら救急車に乗せないで、不審死なので警察が来るまでは遺体を動かさないと思ったんです。間違っていますか?」
「いや、間違って無いよ。彼が落ちた下には花壇でハーブの低木が植わってたため、上手い具合にクッションになって大事に至らなかったみたいだよ。ただ、新井君が自分で飛び降りたのかは分からないけどね」
あ、そうか。そもそも飛び降り自体が真実か否かは当人に聞かなければ分からないよな。
刑事さんの隣で赤月がスマホを見て聞き取れ無い程の声で呟いた。
「いま病院へ行っている部下から連絡が来て、新井君はかすり傷程だと報告があった。詳しい事情はまだだが兎に角良かった」
やっぱり赤月は不思議だ、理解出来ない。何で独り言みたいな呟きで隣の月島さんに情報を伝える事が出来たのか?
今も何事も無かった様な顔で、スマホの画面をタップしている。
「協力ありがとう藤原君。次は柿崎君来てくれるかな」
僕は立ち上がり入れ違いに柿崎が座る。聴取が終わった生徒の所へ行こうとしたら、ポケットでスマホのバイブが振動した。
何の気なしにスマホを取り出し画面を見たらLINEの通知が来ていて、友達を追加しましたの文字。一体誰だ? 誰とも連絡先交換して無いぞと確認をすると『名探偵赤月』の文字。
「はあああぁっ?!」
思わず声に出して叫んだ僕に当の赤月はノンビリ手を振りウインクをした。
悔しい事に其れが如何にも様になってたのだった。
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