第3話 二重人格
受験に関連した事件は枚挙にいとまがない。
数年前に、東海中学という名門中学を卒業してトラック運転手をやっていた男が、息子が家でゲームをしているのに腹を立てて、殺害してしまったという事件があった。息子は成績がよかったらしいから、父親よりは絶対にまともな人生を送れただろう。
俺が10代の頃に聞いた話だが、母親が勉強のできない子どもに苛立って、殺害してしまった事件があった。もう30年以上前。
他にも、親が確か医者で、息子に勉強させるために暴力を振るっていた家があった。息子は自宅に火をつけてお母さんと下の兄弟を焼死させてしまった。この子を救済するために、周囲の人が嘆願書を出していたらしい。この子に同情の余地があるだろうか?俺にはわからない。
それから、中学受験に失敗して、お母さんと子どもが無理心中した事件もあった。親が異常だと思う。高校や大学で挽回できるのに、中学受験に失敗したら人生終わりと思い込んでしまっている。
これは人から聞いた話だけど、実話だ。
A君という男の子がいた。
もともと発達障害だったみたいで、多動だった。授業中、じっとしていられないタイプ。机をガタガタさせたり、歩き回ったりしていて、授業を妨害していたらしい。授業中うるさいからと特別支援学級に移された。人と同じことができないからと、普通学級ではいじめにも遭っていた。
親は何とか勉強させようとして、子どもに頻繁に暴力を振るっていた。骨折するほどのものだったらしい。昔は今ほど児童虐待に煩くなかったから、度々病院に行っていたのに、通報されることはなかった。
発達障害なのに親が無理やり普通の生活をさせようとしていたから、うつ病になったりもしたらしい。
最終的にその子は、虐待を乗り越えるために多重人格になってしまった。現在では解離性同一障害と言われている精神疾患だ。目の前に起きている虐待と自分を切り離して考えることで、ダメージを回避しようとして別の人格を生み出してしまう。その人はもう成人しているけど、仕事はしていない。虐待がなかったら、障碍者雇用などで社会に出たりと別の人生があっただろう。
完璧な人間なんてそもそもいないのに、子どもに理想を求め過ぎた結果、病んだ子供ができてしまう。親は子育てに失敗して、世間に恥ずかしい、だけで済むかもしれないが、子どもは精神疾患で長く苦しむ。そう考えると、子どもは放任した方がましなのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます